愛のカタチ/1.5
M
見慣れた風景が窓の外を流れていく。
それをぼんやりと眺めながら…膝の上の温もりを何度も、何度も撫でていた。
良介達の暮らす寮でこの猫ちゃんを飼う許可がおりたので、さっき買ってきたグッズと一緒に二人を車に乗せて学校を出た。
通学路を走り大通りを横切って駅前のターミナルへ。
その横の踏切りからなだらかな坂道を上がれば…寮はすぐそこ。
生い茂る木々の隙間から茶色い建物が見えてきて…その正門の前に到着して、車が止まった。
「俺がゲージ持ってやるから良介はその他の荷物を持て。」
「いいのか?結構重そうだけど…」
二人の話を聞きながら車を降りると後部座席から同じく降りた芹と目が合って。
「寝ちゃってるんだぁ?クロちゃん、くどーに慣れてるね!」
ニコニコな笑顔を浮かべた芹が両手を差し出してきた。
そんな芹に笑い返しながらも…俺は少し戸惑ってしまう。
この温もりを…離したくないと思ってしまったんだ。
「…くどー?」
首を傾げる芹に呼ばれてハッと我に返る。
小さく息を吐き、腕の中の温もりに顔を埋めて眠ってる猫ちゃんの額にキスをひとつし…そして。
「はい。」
「わーい!ありがと!」
温かな温もりを…芹に手渡した。
嬉しそうに破顔しながら芹が拓真達の後を追って寮に走っていく。
その後ろ姿を見送りながら…なぜだろう。
胸がチクチクと痛んだ。
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