愛のカタチ/1.5
E
わざとじゃないかと思ってしまう良介のピンポイントなツッコミをなんとかかわし、腹が減ったと言うヤツのご要望通りに我が家の晩ご飯の残りを出してやった。
それを美味しそうに食べている姿を横目で見ながら黒猫を抱っこしてバスルームへと向かいガラス戸を内側に押し開いて。
「大丈夫だよ…怖くないからね?」
小さく震える猫ちゃんに声をかけた。
イキナリ連れて来られた狭いそこに相手は驚いたらしく小さな体をじたばたさせて俺の手から逃れようと暴れる。
「わっ…ちょっ…だから危ないって…!」
「言って通じるかっつーの。」
背後から伸ばされた拓真の手が猫ちゃんの首根っこを掴みヒョイと持ち上げる…と、今まで大騒ぎしていた猫ちゃんはまるで『借りてきた猫』そのままに静かになった。
「あ…ありがと。」
「洗面器の八分目までぬるま湯はって、シャンプーを一押し分入れてかき混ぜろ。」
キョトンとする俺をジッと見て拓真が唇にキスをしてきて。
「聞こえたか?」
「あ…うん。」
言われるままに準備を終えると泡立ったお湯の中に黒猫を下ろし…拓真がその華奢な体を洗い始めた。
最初ニャウニャウと鳴いていた猫ちゃんは次第に静まり…今は目を閉じてリラックスしてるみたいで。
「なんか…気持ち良さそうだよね?」
「俺のテクニシャン具合はお前が一番良く知ってんだろうが。」
…なんて。
そんな事を真顔で言われて顔が熱くほてる。
「だって!そんな…俺、猫じゃないし…」
俺は…なんの言い訳してるんだろ?
思わず苦笑いが出た。
「…んなの分かってる。何度抱いてると思ってんだよ。」
そうとだけ言い、弱くだしたシャワーを猫ちゃんの体に当てながら拓真が横目で俺を見る。
そのまなざしがやたらと色っぽく見えてしまい…俺の方がドキドキしてしまった。
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