愛のカタチ/1.5
B
休憩室のベンチに腰掛けこれと言った会話もないままただただ時間だけが過ぎて行った。
すぐ隣りに佐古のぬくもりを感じるのに…なんとなく、どことなく距離感が縮まらず心だけが遠くなるばかり。
「…楓。」
かけられた声にビクリと震えぎこちない笑顔で隣りを見上げる。
「なんだよ…なんかあったのか?」
予想外の台詞に言葉を返せないでいる…と。
「お前…最近なんか変だぞ?」
…と、最近僕が感じていた事を佐古が僕に向かって言ってきた。
「え…そ、そう?」
缶を掴む指をモジモジと動かし返す言葉を探す。
様子が変なのは僕じゃなくて佐古の方なのに…まさかそうくるとは。
「なあ、楓?」
「さっ…」
震える唇から咄嗟に飛び出したのは…なんとも中途半端に裏返った声。
僕は…テンパる頭を必死に回して言葉を紡いだ。
「佐古、が…」
「…俺が?」
ゴクリ、と生ツバを飲み込んで。
「佐古が、おかしいんじゃない…の?僕は、普通、だよ?」
そう言い切って大事な人を見上げる…と。
キョトンとした丸い目を僕に向け佐古がパチパチと瞬きを繰り返した。
「は?何で俺?…つか最近お前、俺の顔見ちゃ何か言いたそうな顔してるだろうが。」
「それは…佐古がいつもボンヤリしてるから僕、どうしたらいいのか分からなくて…。」
言い訳じみた事なんて言いたくないけどそれは紛れもない僕の中での真実だから、仕方ない。
けど…
怒られるかな?
口きいてもらえなくなっちゃわないかな?
そんな事を心配して…心拍数だけがどんどんと上がっていく。
すると…佐古から伸ばされた腕が僕の背中に触れるとそのまま抱き寄せられた。
「…佐古?」
「そうか…余計な気を使わせてたんだな?」
苦笑いした佐古が優しく僕を抱き締めてくれて。
「…ゴメンな…」
そう呟くと…強く、それでいて優しく僕を包み込んでくれた。
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