愛のカタチ/1.5
F
メガネをつくるなんて初めての体験だ。
行ったらすぐに買えるものだとばかり思っていたので…。
「それでは視力を測りますのでそちらに座って下さいね。」
「は?…あ、はい。」
いきなりそう言われて戸惑った。
身体測定で使われるような小さな機械を覗き込み…地味に測定を開始。
「一番はどちらに穴が向いてますか?」
「え…右?」
「四番です。」
「あ……上…?」
「六番です。」
「………した?」
「はい、以上です。お疲れさまでした。」
あっと言う間の出来事だったが…はじき出された結果に軽くへこんだ。
「お客さまの視力は…」
と言う話から入りレンズの説明を聞き…。
「仕上がりまで一週間程いただきますので…」
「一週間!?」
…その仕上がり日数にまで驚いてしまった。
芹の顔を…少しでも早くはっきりと見たかったのに。
その思いだけで…クラス委員の仕事も必死に終わらせたというのに。
ガックリと肩を落としていると。
「おおばぁ!ねっ、ね!このフレームとかどぉ!?」
…と、俺の芹の楽しげな声が聞こえた。
そちらに視線を向けるとオレンジ色の固まりが段々とカタチを成して…。
「おーばっ!!」
そして、俺の愛する芹になった。
…が。
「芹…もしかして物凄く顔の距離近くないか?」
「ん?」
今の俺の視力でこれだけ鮮明に…しかも逆に顔しか見えないと言う事は?
「チョー至近距離!!」
そう言って笑う可愛い唇に触れるだけのキスをした。
「な…っ!?」
「ん?どれだって?」
慌てる芹の手から黒い物を取り…グッと顔を寄せる。
「…フレーム?」
「さっきそう言ったでしょ!!」
しげしげと眺めて視線を上げると真っ正面の芹の顔が真っ赤に染まっていて。
「…どうした?」
「どうしたもこうしたも…!」
クスクス。
笑い声に顔を向けると…俺の視力を測ってくれていた店員さんと、芹の隣りにいる店員さんとが楽しげに笑っていた。
「笑ったりしてごめんなさいね?」
「あまりにも…お二人の会話が可愛かったもので…つい。」
そう言ってまた笑いだす二人を見ながら…俺と芹も顔を見合わせて笑い合った。
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