愛のカタチ/1.5
D
自動ドアが開くとすぐに智を促し一番奥の窓際の席へと座らせる。
「寒くないか?」
「ん…この中は温かいから大丈夫。」
顔ではやんわりと微笑んでいるものの…頬も鼻も少し赤い。
座った智の隣りに腰掛け冷たくなってる頬を両掌でそっと包んだ。
「…温かい。」
ホッとしたような柔らかな表情に…恥ずかしながら胸がドキンと大きな音をたてて。
「…なあ…。」
「ん…?」
そのまま冷たい唇に俺を重ねた。
「キス…していいか?」
「も…してるでしょ!」
真っ赤な顔して怒る智にもう一度唇を近付けた。
…すると。
「おーい!こんな目立つ所で堂々とチューすんのは止めてくれ!」
チラと視線だけを向け…飲み物を乗せた盆を持った流サンを見上げる。
「拓真はコーヒーだったな…で、彼チャンは俺のイメージでミルクココアにしちゃったんだけど…どう?」
俺達の目の前にホットドリンクを並べて流サンが席に座る。
それを確認して立ち上がると…ショールームの片隅に設置されている無料ドリンクの自販機に向かい、智の『ホットウーロン茶』のボタンを押した。
ホンの数秒で入れ終わり小さな機械音がしてランプが点滅。
扉を開けて中の紙コップを引き出すと、温かな湯気の立ち上ぼるそれを片手に席に戻った。
…すると。
「智ちゃんっていうの?可愛い名前だね!まだ学生さんなんだ…若いなぁ。今度さ、お兄さんと一緒に遊ばない?」
…クソ流…鼻の下を伸ばして智をマジナンしてやがった。
プチッ。
久々に…自分のキレる音を聞いた。
俺に背を向けている奴の腕を後ろから掴み手に力を込める。
「イッ!イデデッ!?」
「た、たくっ!?」
奴に手を握られ心底困った顔をしていた智が、慌てて立ち上がり俺の腕にしがみ着いて必死に離させようとした。
「痛ぇ!マジ痛ぇって!拓真!」
「…当たり前でしょ。痛くしてんだから。」
「たくっ!ダメ!」
腕を抑えるだけじゃラチがあかないとふんだのか智が俺の身体にギュッと抱き着いてきて…。
「ダメだったら…!」
…愛する恋人のそんな切なげな顔見て止まんねぇ奴なんていねぇよな。
モチロンこの俺も例外なくその内の一人で。
「…流サン。いくらアンタでも…次はねぇよ?」
そう言って見下ろすと…顔を青くした奴が大きく頷き、智用にと自分で持ってきたホットココアを一気に飲み干した。
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