愛のカタチ/1.5
I

職員室を出て…真っ直ぐ教室に戻らずちょっとばかし寄り道をした。


ガラッ!


「チワッス!」
「どーも。」

「…おう。」

来慣れたガラス戸を開け中に入ると…カウンターに腰掛けいじってるパソから少しも顔を上げずココの主が返事だけしてよこした。

いつもの事なので気にせず奥部屋に上がり、冷蔵庫の中の久遠専用ウーロン茶を取り出し各々のマグに注ぎ、先に座った柊に手渡してやる。

「なに…牛乳じゃねーの?」

「るせーな…入れてやっただけありがたく思えよ。」

ニヤニヤしてるヤツを睨み付け窓の外に視線を移した。

「悪かったな。」

「…あ?」

小さく呟くヤツの…傷だらけの顔をチラと見る。

「お前にはちゃんと言わなきゃーって思ってたんだよ。」

「だから何を。」

変にニコニコしてるのが気に入らないが…そう言うつもりでいたってなら、許す。

「でも詳しくは言えないけどな。」

「なんだそりゃ。」

なんて…いつもと変わらぬやり取り。

「一言で言えば…家庭の事情。親子ゲンカの仲裁みたいな?」

そう言ってガハハッ!と笑い、痛みに顔をしかめる姿が俺的には気に入らない。

「…その仲裁に入ったお前がこんなボロボロになるってのもどうなんだかね。」

皮肉たっぷりに言ってやる。

なんて…ガキかよ。

思わず苦笑い。
なのにコイツは相変わらずの笑顔で。

「いーんだよ。ほとんど俺の自己満だからな…っつか俺も吹っ切れたトコあるしさ。」

二カッと笑うヤツの笑顔は…確かにいつもより晴れやかかもしれない。
自分的に一応『柊の親友』を気取ってる俺としてはやはりここは喜ぶべき所なんだろう、な?

「ま…ケンカじゃないならいい。俺も弟もお前のピンチにはちゃんと行ってやるから…一人でなんかしてんなよ?」

ウーロン茶を飲み干しそうとだけ告げて立ち上がりシンクでマグをゆすぐ。

「佐古…。」

「…あ?」

水音で良く聞こえないが…それでもヤツの思いはちゃんと伝わってきた。

『ありがとな。』

振り返りも返事もせず俺は黙って口元を緩めた。


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