愛のカタチ/1.5
M‐弘樹SIDE

剣にいの車で連れて来てもらった…懐かしい我が家。

ここを出る時…淋しさとか不安とかより、ホッとしたのを覚えてる。
もう二度と…この敷居を跨ぐ事はないと思っていたのに、ね。

…思わず苦笑いが出た。

「…弘樹。」

重苦しい木の扉を見上げそんな事を思っていた僕の背中を…剣にいがポン、と押して。

「祐一郎が根性決めて頑張ってんだろうからお前も…ジイサマから逃げるなよ。」

唇を噛み締め拳をギュッと握る。

…そうだ。
ゆうが僕の為にここに来ているんだ。
だから僕は…逃げる訳にはいかない。
顔を上げ静かに佇む家を真っ直ぐ見据えて…振り返らずゆっくりと足を進めた。

一歩一歩踏み締める足取りは重い。
逃げ出したい気持ちと祐一郎が心配で堪らない思いが入り交じりどうしようもなくなる。
廊下をバタバタと走りながら色んな事考えて……そして…道場の入口が見えてきた。

走っていた足が無意識にゆっくりとなり段々とぎこちない動きに変わる。
心臓がバクバクして…嫌な汗が滲む。

大好きだったここにくるのが…いつの間にかこんなに苦痛になっていたなんてね?

…苦笑い。

大きく一度、深呼吸をしてから中に足を進める。
入ってすぐの壁に手を付き電気のスイッチを押した。


パチッ。


…すると…そこには。

「…ゆ…う…?」

広い道場の真ん中…畳の上に俯せで倒れ込みぐったりしている祐一郎と…それを無表情で見下ろす…おじいちゃんの姿があった。


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