愛のカタチ/1.5
G‐弘樹SIDE

重い身体を少し動かし…それよりももっと重たいまぶたをゆっくりと開いた。

視界一杯に広がってるのは見覚えのない…真っ白な天井。

「弘樹!」

僕の名を呼ぶ声の方に顔を向けると…そこには両親とお兄ちゃんとお姉ちゃんが立っていた。

「…ここは…?」

身体を起こそうとした途端、右の脇腹に鋭い痛みを感じ顔をしかめる。

「無理するな、弘樹。」

「そうよ。少しはゆっくりしなさい。」

僕を見つめてお兄ちゃんとお姉ちゃんが静かに笑って…。

「ここは病院だ。運び込まれて処置が終わってから…丸二日間眠っていたんだよ。」

すぐ隣りにやってきた父さんがそう言って僕の手をギュッと握った。

「…二日…?」

ハッとして母さんの顔を見て。

「そうだ僕…稽古しなきゃ!大会が近いんだ…」
「出場は取り消した。」

握ってくれてる手に力がこもり…僕は父さんを見上げた。

「…うそ…?」

「本当だ。傷口が完治するまでしばらくは安静にしてなきゃならない。」

「だって…!」

繋いでる父さんの手を握り返す。
…それだけで、刺された場所に痛みが走った。

「お祖父さまからも…そう指示がだされているんだ。」

「おじいちゃんが…?」

師匠であるおじいちゃんの指示は絶対でそれを破る事は許されない。
悔しくて…唇を噛み締め僕は布団に潜り込んだ。



そして一か月後。

やっとの事でお医者さんからのOKが出た。

走って家に帰り道着に着替えて道場の畳を踏み締めた。
大好きなこの場所に戻れて…僕は幸せだった。

そして、いつもと同じく走り込みをした後おじいちゃんと組み手をして。


カクン。


組んだ瞬間、膝から力が抜けた。

「…弘樹?」

「あれ?なんか…おかしい…?」

何度試しても身体が言う事を聞かず…挙句、おじいちゃんに触れられるだけで震え出し訳もなく泣き出してしまった。

あの雨の日のアクシデントは…僕の心を自分で思っているよりも深く傷付け…そして。
あんなに好きだった柔道までをも奪っていった。


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