愛のカタチ/1.5
B
しょんぼりとした希を改札で見送りひとつ溜め息を吐いて歩き出した。
家族からなにも聞かされていない希でさえ感じていた違和感の中、弘樹は色々な思いと戦いながら毎日を過ごしてきたんだ…と改めて思い、胸が痛んだ。
泣きたい時もあったろうし吐き出したい思いもあっただろう。
なのに…
その大事な時に俺は…弘樹の側にいてやれなかった。
いくら後悔しても遅いんだけど…。
寮に戻り重い足取りで階段を上がり…弘樹の部屋の前で一呼吸おいてノックをする。
コンコン…コン。
黙って待ってても中からはなんの物音もしない。
ズボンのケツポケットからキーケースを取り出し弘樹の部屋の鍵を出して…ロックを外す。
カチャン。
無機質な金属音の後ゆっくりとドアを押し開くと…薄暗い部屋の真ん中で、立てた膝を抱いて座っている弘樹がいた。
「…弘樹…?」
後ろ手にドアを閉じて壁際の電気のスイッチに触れる…と。
「点けないで!」
愛しい恋人のくぐもった声が聞こえ…スイッチを押さず側に近付く。
「…ひろ…。」
その場に膝をつき、小さくなってる身体を包み込むようにやんわりと抱き締めて。
「…寒くない?」
そう声をかけ…強く抱き締めた。
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