愛のカタチ/1.5
K‐良介SIDE

「芹!?」

叫んだ声に振り向く事なく芹はこの場から走り去ってしまった。

普段から変な所に気を使う芹だけど…今のこの状況だと、自分の恋敵である小松に気を使っている…って事だよな?
あまりにも芹らしくて少し笑ってしまった。

「…大葉…」

目の前で俯く小松がゆっくりと顔を上げて…。

「僕は、キミが…好き、です。」

初めて怒鳴りつけたあの日のような…必死な顔をしてそう言った。

「こま…」
「もちろん、キミにカレがいるのは知ってます!僕の事…好きじゃないのも分かってます!けど…それでも僕はキミが好きなんです!」

一気にしゃべり終わると肩で息を吐き…キュッと唇を噛み締めて。

「好きになってくれなんて言わない。たとえセフレだって構わない。僕はキミが…キミの側にいたいんです。」

俯く小松の小さな身体を見つめ…姿勢を正して頭を下げた。
…そして。

「ごめんなさい。」

…そう、告げた。

「俺は芹が好きなんだ。それに…セフレとかは有り得ない。キスも…セックスだって心ごとするものだよ?」

黙ったままの小松に…俺の気持ちはキチンと届くのだろうか?
一生懸命してくれている告白に…俺は真剣に答えなければならないと思っている。
だから…ちゃんと伝わらないと意味がないんだ。

「俺は…小松を仲間として好きだ。だけどそれは…芹に対する『好き』とは全く違う物なんだ。」

ゆっくりと上げた幼さの残る顔を見つめて…。

「だから俺は…小松とは付き合えない。」

そう告げた俺にギュッとしがみ着き小松が何度も首を横に振った。

何度も…何度も。

まるで駄々をこねるような小松に諭すようにゆっくりと。

「小松が好きだと言ってくれる今の俺に変えてくれたのは…誰でもない、芹なんだよ。」

噛んで含めるように一言一言を丁寧に述べる。

「俺には…芹が必要なんだ。だから…小松の気持ちに答える事はできない。」

見下ろした大きな瞳から…ポロリ、と涙が零れ落ちた。
その涙を拭ってやる事もせず…ただジッと見つめて。

「ごめんなさい。小松の気持ちは凄く嬉しい。…けど俺は…お前を仲間以上には見れな…」
「もう…いい。」

しがみ着いていた細い腕に身体を突き放され…目元をゴシゴシと擦った小松がパッと顔を上げ、緩く笑う。

「…ありがとう大葉…ちゃんとフッてくれて。」

そう言ってまた目元を拭って。

「ケジメとして…ちゃんと気持ちを伝えたかったんだ。ダメなのなんて分かりきってたんだけどね。」

力なく笑う小松を見つめて…胸がチクン、と痛んだ。

「おかげでスッキリしたよ。これでやっと…先に進める。」

にこやかに笑う小松の視線が俺を通り越し後ろに注がれる。
チラとそちらを見れば…少し離れた場所にある植え込みの縁に座る秦修司の姿があった。

「これもみんな…芹沢のおかげだよ。ありがとう…って伝えて下さい。」

はにかんで笑う奴を見ながら。

「本人に言ってやってくれ。絶対に喜ぶから。」

そうかけた声に笑顔で頷き…小松は秦修司の元へと歩いて行った。

その後ろ姿を見送りながら…俺は一度だけ頭を下げた。

『好きになってくれて…ありがとう。』…と。


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