沖に着いた時には男は息をしていなかった。
さっきまであんなに余裕がありそうだったのに。
そう思ったからこそ私は焦った。
このまま息を吹きかえさなかったらどうしよう。
だけど、どうすることも出来ずに居る。
何せ私は人間がこうゆうときどうするかなんて知らないのだ。

勉強・・・しとけばよかった。

そんな知識身につけたところで何になる?
父はそう言ってそれ以上の事を規制したのだ。
取り分け父は人間に厳しい。
仮にも王の娘が人間と触れ合っていいわけがない。

解っている。
そんな事は知ってるの。

今知りたいのはこの人が助かる術だけよ!

不甲斐無さに涙が出そうになる。
何故、私はこんなにも時間が経つに連れてこの男に入れ込んでいるのか。
自分でも解らない。

「目を・・・開けてください。」

初めて人間に声をかけた。
その声は緊張か、畏怖か、震えていた。
そっと閉じられた瞼を指でなぞる。
この瞳はどんな色をしてるのか、私はもう一度見たいと願った。

「・・・ねぇ?」

なんと言えばいいのだろうか。
言い様もない恐怖だけが私を襲う。
寄せてきた波が大きな音を立てて私の尾びれを濡らす。

何か出来ることをしよう。
そう思ったときに出来たのは歌を唄うことだけだった。
押し寄せる波の音と私の声が彼に届けば良い。
奏でる旋律は涙。
私は気が付けば、涙を真珠に変えて泣いていた。
どのくらいそうしていたのだろうか。



「泣くな、糞」

呟きが聞こえてハッとすれば、男が咽込みながら海の水を吐き出した。



070326.











あきゅろす。
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