悪い癖
悪い癖


しっとりと静かになった部室で一人、私はスクリーン前、この間の試合で撮ったビデオを見ていた。

データ処理、分析なんてのは名ばかりで、私はその大画面に映るあの人に恋をする。

お母さんには遅くなるとメールで伝えたから、用意はいいものだ。

外は真っ暗で門が閉まるギリギリ。

私はそのタイムリミットまで只ひたすらに画面を睨み続ける。

きっと帰りは一人で怖いかもしれない。いつもは彼も一緒に遅くまで残ってるから、必然と私は送って貰ってるが、今日彼はいない。彼にだって用事やなんかはあるものだ。先に帰った理由は知らないが、きっとそうだろう。

私はいつもこうやって一回目のビデオは手が止まってしまう。記録用のノートは白紙のまま、気が付けばペンすら握ってはいない。

それは彼が悪いのか。

滴る汗。いつもに増して真剣な目。夢の為に動き回る逞しい鍛え上げられた体。あのフィールドが魅せる魔法だ。誰かに指示を出すために叫ぶ声にも鳥肌が立つ。今すぐにでも、私はあのフィールドの上で抱かれたい。息が弾む。

「ヒル魔…くん…っ」

手を伸ばす。

触れたい、触れてしまいたい。

この手に貴方を掴めきれたら私はどうなるのか。決して手に出来ない距離で止まった手。翳す指の隙間からからでも小さく映る蛭魔くんにも、私は全身で反応する。頬が熱くなる。これ以上好きにさせないで。願えども彼には勝てない。

「大好きよ…」
「お前の悪い癖だなぁ?癖マネ」
「っ!」

いつから!?

驚いて飛び跳ねそうになった。
だが、後ろからあのスクリーンで見た逞しい腕に
肩を抱かれてはそれさえも出来ない。蛭魔くんのぬくもりを嫌でも感じる。リアルな熱が映像では決して感じえない。耳元にかかる熱っぽくさ迷う息も私を正気から遠ざける。

「本物の俺の熱を知ってるくせにな。」

意地悪く蛭魔くんが呟く。

「飽き足らなくなるのか?スクリーンの俺を見ても欲情するんだな」

もう、なにも言うことはない。

「私の…癖よ?ヒル魔くん」

fin.

←Loglog Top
070311.



あきゅろす。
無料HPエムペ!