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さくらのとき(夜→桜)
※夜→桜
※サカも出張ってます。
4月
桜の季節に君と再会
朝の教室。
今日はジャンプの発売日だ。
いつもより少し早起きして、コンビニでジャンプを買って、HRの前に読む。
というか一日中ジャンプに耽る、それが月曜日の日課だ。
「すっげぇ美人なのに、すっげぇ残念だよな」
オレの傍でジャンプを盗み見ていたサカが唐突に口を開く。
誰のことを言っているのか大体分かった。
面倒だから、オレは引き続き、ジャンプに没頭することにする。
「だいぶ変わってるじゃん、“氷の女王”」
ああやっぱりか。
雨宮のことだ。
「ふーん…」
昔は明るくて優しくて可愛かったんだぞ、と言いたいような言いたくないような変な感じがする。
「…お前ってさー氷の女王の話になると不機嫌?だよな」
サカが「ほれ、シワが寄ってる」と言いながら、オレの眉間を指でつつく。
「そーかぁ〜?」
それでも、やっぱり知らぬ振り。
アイツのことを何も知らない奴が好き勝手に言うこと自体面白くなくなるのは事実。
そして、
“どうしてそんなに変わってしまったのか?”
それをアイツに訊けない自分自身にもイライラするのも事実。
「見た目的には、アゲハのタイプだろ?」
「は?」
サカが突然妙なことを言い出した。
「小さくて可愛い、小動物みたいな女がタイプだろ?あれで、にこにこと笑ったらアゲハのモロストライクだと思うんだよなー」
年頃の健康男子同士、それにサカは中学からのダチだ。「誰が可愛いか」なんて会話は散々した。
コイツはあれらの会話からオレの“好み”なんて分析してたのか。
油断ならねぇ…。
不意にガキの頃の雨宮が頭をよぎった。
あの頃は、笑ったり怒ったり、表情がクルクル変わる奴だった。
あの頃、オレはアイツのそういう表情を見ているのが好…
「わぁぁぁぁッ!!!!」
「な、なんだよ!?急に叫ぶなッ」
オレの叫び声に動揺しているサカ以上に、オレがオレ自身に動揺している。
今、オレは何を考えた?
オレが雨宮を好…
「ナイナイナイ…」
首をブンブンと横に振る。
「お前…やっぱり変な奴だよな」
サカが引いた目でオレを見る。
「うるせぇ」
その瞬間、教室の空気が、ほんの一瞬だけシンとした。
この気配は…
「お、女王の登校だ。今日は来たな」
雨宮だ。
クラスの奴らの誰とも挨拶をしないで、自分の席に着く。
完璧な無感情、無関心。
なぁ、あの頃のお前はどこにいったんだ?
オレのことを覚えているのか?
なぁ…
「…ほら、やっぱりお前は女王を見つめてるじゃねーか」
サカの呟きには気づかずに、視線は凛とした空気を纏う君に奪われる。
桜の樹の下で
長い髪を揺らす君と再会
子どもの頃の淡い想いが
一気にあふれ、また消えた。
そうして
君への二度目の恋に落ちた。
(本人はまだ無自覚ですが)