TITLE 『僕』(アレ→リナ) ※ ほんのり本誌ネタあり 僕らが触れてもリナリーは気にしない。 それは僕に対してだけではないけれど、リナリーは異性として仲間を意識しない。 仲間という安心感故か? それとも、戦場に出れば味方同士の密着なんて当たり前だから、それに慣れてしまったのだろうか? 「リナリー」 「なぁに、アレンくん?」 ギュッと細い首に腕を回して抱き締める。 「アレンくん?」 突然の抱擁にも動揺せずに、リナリーは僕の名前を呼んだ。 「寂しいの?」 ポンポンと優しく背中を撫でられる。 別に寂しかったわけではないのに、リナリーの暖かい手にひどく安堵して、泣きたくなってしまう。 「アレンくん?私は傍にいるよ」 リナリーのこの優しさは皆に対しても平等だって分かっている。 「リナリー…リナリー…」 口をついて出るのは愛しい彼女の名前だけで、そんな自分に情けない気分になる。 ポン、ポン、と穏やかなリズムで撫でられる背中。 男として意識されたいのに、意識させるための行為すらも出来なくて、僕は彼女に縋るばかりだった。 少しだけ、彼女を抱き締める腕に力を込める。 「うん…アレンくん…私は此処にいるよ」 「…ずっと…?」 僕がそう言うと、リナリーがふんわりと笑った気配がした。 「うん…私が此処で生きている限り、傍にいるよ」 「……僕より先に死んじゃ嫌です」 「うん、頑張るわ」 「全部…全部が終わったら、リナリーに伝えたいことがあるんだ。聞いてくれる?」 「うん、もちろん」 「その頃には、もっと強くなっているから…全部が終わったときに…僕が、『僕』がちゃんとリナリーの前に立っていられるように…強くなるよ…」 「アレンくん…?」 僕の言葉の意味するものをリナリーは知らない。 不思議そうな声を上げるリナリーが可愛くて、愛しくて、そんな気持ちを少しだけでもリナリーに分かって欲しくて… 身体を離した、その瞬間に、リナリーの額に口づけた。 「え…?」 「慰めてくれた御礼です」 にっこりとリナリーに笑ってみせる。 「え…あれ?」 鈍いリナリーも、さすがに口づけには動揺してくれた。 僕を説明を求めるように見上げてくる。 笑顔を崩さない僕に、リナリーは小さく「もぅ」と零した。僕がこれ以上何も言わないだろうと思ったのだろう。 「ちょっと前まで、目の位置が一緒だったのにね。今は…」 そこまで言って、リナリーの頬が赤く染まった。 「はい。今は、リナリーの額にキスするのに丁度良い背丈になりました」 僕がそう言うと、リナリーの頬がますます朱く染まった。 君への想いは『僕』だけのもの end. 08/08/08 |