TITLE
恋語り(ラビ→リナ)
※ラビ→リナ
※セクハラビ
「16歳なのに恋人がいないなんて、おかしいかしら?」
リナリーがラビの襟元をグッと掴んで、そう言った。
そんな真剣な表情で詰め寄られたら堪らない、そうラビは思った。
間近に寄せられたリナリーの顔を視界から消すために、ラビは笑顔を作った。
「…いきなり、なにさ?」
と、にっこり笑って聞き返してみるが、きれいに笑えているのか心配になる。
「もう!ラビが言ったんじゃない!『そんなんだから、恋人が出来ない』って」
ラビの襟元を握っていた手に力が籠る。
「ああ…方舟でか…確かに言ったけどさ…」
「そういうラビは16歳のときには恋人がいたの?」
リナリーの質問に、『もしかして意識されてる?』と期待がラビの胸中にわいてきた。
しかし、次期ブックマンとして自分の過去を簡単に話すことは出来ない。
というか出来ればリナリーと『その手』の話はしたくない、あんなこと』をリナリーに言えないさ、ラビはそう思った。
「う〜あ〜…。16歳と言やぁ、オレが教団入ったころか…つーか、現18歳のオレには恋人はいないさ!同じく18歳のユウにもいないし、アレンにもいないさ」
しどろもどろと言葉を並べてみる。
「アレン君は、まだ小さいからいいの!」
「えぇ!?アレンは、リナリと1コしか変わんねぇぞ!?」
『脱・弟』が来る日がまだまだ遠そうなアレンを不憫に思い、ラビの胸のあたりが痛んだ。
「そうか…神田にも確認しなきゃよね?でも、その前にラビよ!」
「ちょッ!待てって!」
「?」
「…オレの過去の恋愛遍歴がそんなに気になるんか?」
「…恋人、いたの?」
「…いやぁぁぁぁ…いない、といえばいないさ…でも、まぁ健康男子だし?人生経験はそこそこある…かも…?」
歯切れの悪いラビの言葉を不思議そうにリナリーは聞いていた。
ラビが言わんとすることを察し切れない、リナリーにラビは安堵する。でも、恋の味も知らず、どこまでも純真なリナリーに歯がゆいともラビは思った。
「ラビも、16歳のときには恋人はいなかったってこと?」
「…そうさね…恋人は、いなかったさ。うん」
嘘ではない、ただ人生経験が豊富なだけさ、ラビはそう自分に言い聞かせた。
「じゃあ、なんであんなこと言ったの?」
「いや、リナリーみたいに可愛い子に恋人が一人もいないのが不思…リナリ?」
ふとリナリーを見れば、その顔を真っ赤に染めていた。
「リナリ?どした?」
「分かったわ…」
「へ?」
「ラビにいつもそうやってからかわれるのは、私が真面目過ぎるからなのね」
「…は?リナリー?」
「…兄さん以外のひとに可愛いなんて言われたの、久しぶりなの…っ。だめね、慣れてないからまともに受け取ってしまうわ…」
シスコン室長の目が光っている日々。
リナリーに「可愛い」なんて言ってしまった日には、どんな報復行為があるか分からないから、皆そう思っていても言えずにいた。
ラビはあたりを見回す。
誰もいないことを確認すると、リナリーを真っ直ぐに見つめた。
「リナリーは可愛いさ」
「止めて」と恥ずかしそうに頬を染めるリナリーが可愛くて、
ラビの理性がとんだ。
「…ラビ!?」
急に抱きすくめられて、リナリーが驚いた声を上げる。
「リナリ…」
耳元で名前を呼べば、くすぐったそうに「ん…」と声を出す。
「ラビ…放して…」
「リナリーが可愛いから悪いんさ」
「ラビ…」
泣き出しそうな小さな声でリナリーが抵抗する。
「…これ以上のことはしないから、あとちょっとだけ、リナリーの感触とか味わせて…?」
「感触とかって…『とか』って何!?」
「…まぁ…こう…色々さね」
リナリーの耳に唇が触れそうな程の近い距離で言葉を紡ぐと、リナリーは身をよじった。
ラビの口元に笑みがともる。
「…くすぐったいんか?」
そうラビが囁くと、リナリーが「ぁ…」と甘く息を吐いた。
「リナリは敏感さ」
クックックと喉を鳴らすラビにリナリーは、「…また、そうやってからかうのね」と抗議する。
「茶化してないと、これ以上≠フことをしちゃいそうなんさ」
「これ以上≠チて?」
腕の中が大きな黒目をクリクリとさせながら見上げてくるリナリーにラビは苦笑いをする。
「…あまりに純粋だと、セクハラ攻撃も意味がねぇさ」
茶化しながら必死に自分の中の衝動を抑えていても、彼女の前ではそんな努力さえあっさりと崩されてしまいそうになる、とラビは思った。
「もぉ…ラビの言うことは秘密が多くてよく分かんないわ」
不満げに頬を膨らますリナリーの黒い髪に、ラビはキスをし、身体を離した。
「まぁ、オレは意外と一途だってことさね」
君に出会ったあの日から
僕は君の虜です。
end.
08/05/28
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