TITLE ガクside 殺したい壊したい殺したい壊したい殺したい壊したい殺したい壊したい殺したい壊したい殺したい壊したい殺したい壊したい殺したい… 破壊衝動には波があることは自覚していた。 ツキタケとひめのんに囲まれて幸せな筈なのに、心は満たされている筈なのに、その波はやってくる。 大切なひとたちを、自分の感情で押し潰してしまわないように慎重に慎重に己の内側を見張って、衝動をコントロールする。 大切なひとたちが眠りに落ちるまで、己の中の衝動を抑え込む。 静寂がうたかた荘を包んだら、俺はうたかた荘をあとにする。 意思も思考も関係なく魂が勝手に動くような感覚に包まれたまま、あの馬鹿を目指して歩き出した。 「ああムカツクな…」 いとも容易く、あの馬鹿を発見した自分に理由の分からない苛立ちがフツフツとわいてくる。 ただ静かに目を閉じてあの馬鹿が突っ立っていた。 その姿を注視しながら、ゆっくりと近付く。 近付きながら、この苛立ちは、あの馬鹿が俺が此処にやって来るのが分かっていたかのように待っているから感じるのだと気付いた。 そして、動揺した心の隙をついて、目の前の景色に色が灯った。 白銀の髪が、 白い肌が、 闇に浮かび上がる。 その姿はまるで… 闇に染められることなどないかのように、見えた。 「……あ――気分が最低だ…」 あの馬鹿までの距離が縮まる。 ゆっくりと瞳を開いて、馬鹿が俺を見た。 「よぉ、ガク」 俺が此処に来ることを分かっていたコイツも、 コイツが此処にいることを分かっていた俺自身も、 全部壊してしまえれば、俺の心は凪ぐのだろうか? …それは違う。 分かっている。 この衝動が無くなるときは 俺がこの世から完全に消えるときだ。 俺はまだ消えるわけにはいかない。 だから、俺は本能に導かれるまま此処に来るんだ。 「…ころしたい…」 俺がそういうと、ソイツは哀しそうに笑った。 end. 2008/05/27 |