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距 離 (神田→リナ)
リナリー12歳、神田が14歳くらいな話。



エクソシストでアクマを蹴り倒すなんて物騒なことをしながら、実は苦手なモン(ルベリエとか)もいっぱいあるし、よく泣くし、病的なブラコンだし…甘ったれなくせに、気ぃ遣いだから、色んなもんを溜め込みやすくて質がわるい。


でも、
怒ったり泣いたり、笑ったり…そういう色んな表情がみえるのはいい傾向だ、と思う。

何かに怯えたような表情しか出来ないよりは、ずっといい。






― 食堂



「もう!お蕎麦ばっかりじゃあ栄養がないわよ?」

リナリーが自分の食事をトレイに乗せて、俺の隣りに座った。

俺は最後の一口をすすって、箸をおく。

「背が伸びなくても知らないんだから」

いただきます、と手を合わせてリナリーはそう言った。

今日の昼飯は野菜の汁(スープ)とパンらしい。
ひとのメニューにケチをつけられる献立か、と思ったが、ジェリーならリナリーの食事の栄養バランスを考えているだろうなと思って、突っ込むのをやめた。

「…俺の身長を越してからそういうことを言え」

茶を飲みながらそういうと、リナリーはムゥっと桜色の頬を膨らませる。

「兄さんと同じ遺伝子なんだから私だって大きくなるわ!神田の背なんて追い越すもの」

大人しそうに見えて、実は負けず嫌いなリナリーはすぐにムキになる。
そういう表情も生き生きしていていい、と思う。

「190もあったら、もうコムイに抱っこなんてしてもらえねぇぞ…」

久しぶりの本部、久しぶりのリナリーとの会話に心は弾んで、ついついからかってしまった。

「なっ!!!?そ、そんなことしてもらってないわッ!ていうか、そこまで大きくならないもん!」

カマをかけてみたら、見るからに慌てるリナリーに、病的なブラコンは治る気配もないことを悟った。

「…ふーん」

まぁブラコンでいてくれるほうが都合がいいんだけどな、と俺は思う。

「なぁに…?」

「別に」

「嘘」

「…それより、わざわざここまでなんの用だ?」

話題を変えるために、リナリーに質問する。

あ、と思い出したような表情を浮かべた。さっきまでの膨れっ面は消え、リナリーは笑った。

「神田が食堂にいるとすぐ分かるの」

「…そうか?」

「うん!周りにひとがいないんだもの」

そう言ってクスクスと笑った。

「昨日、神田が帰ってきたのに会えなかったから『任務おつかれさま』と『おかえりなさい』が言いたかったの」

リナリーが真っ直ぐに俺を見つめて、改めて『おつかれさま』と『おかえりなさい』を言った。

リナリーの嬉しそうな表情に、心臓が跳ね上がる。

やっぱりお前は笑顔が一番いい、と思った。

頬に集まる熱を見られないように、俺は茶をすすりながら短く「おう」と言った。

「それにしても、神田の周りは人がいないね」

「うるせぇ、俺は一人のがいいんだよ」

俺がそういうと、リナリーはまた真っ直ぐに俺を見つめた。

「…なんだよ?」

俺がぶっきら棒に答えても、リナリーは気にもかけずに微笑んだ。

「神田の隣りは、こんなに居心地がいいのにね」

「…は?」

『居心地がいい』なんて滅多に言われない言葉を、しかもリナリーの口から紡がれた。心臓がおかしくなりそうなくらい、早鐘を打っている。

「私はここが好きなの。神田の隣りは、がんばらなくてもいい場所だから」





―…ああ、そういうことか…

リナリーは、『コムイの為に』エクソシストになる決意をした。

『コムイの為に』リナリーは、アクマを倒す。

『コムイの為に』リナリーは強くなりたいと欲する。

リナリーにとってコムイの傍らにいつづける為には世界で一番努力が必要なんだろう。




「…リナリーは、他のやつらに心配かけたくないときは俺のところにくるからな…」

「…うん」

そういってリナリーはまた微笑んだ。

「いつもありがとうね、神田」

安心したようにリナリーが笑った。

何故か胸の奥が鈍く痛んだ。






『一番』には程遠く、

埋められないこの距離が

もどかしいけれど、


お前はそれに安心すると言う。




(俺がこの距離を縮めようとしないから安心するのか?)










end.
2008/03/08
2008/03/09修正


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アトガキ

14歳神田…身長は160cmをちょっと超したくらいのイメージです。
何歳で二人が出会ったのか気になります。。
コムイさんとリナリーが再会するよりも前なのか、後なのか…。理想は、コムイさんと再会してすぐぐらいがいいなぁ…。今回はそのイメージで書いてます。


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