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  09

「これは?」
「悪魔ですが?」
「……だから何だと…」
「先日『瞬間移動だ!』と子供のようにはしゃいでいましたが、彼の能力のお陰なんですねえ実は」
「このクランダがクジュレを!?エクイス!」
「………」

全く理解できない言語で何やら喚き散らしているが、見た目からそれとなく感動しているのだろうと当たりをつける

あながち間違いでもなかったようで、照れくさそうに頬をかく悪魔のマルティム

「私はクラリエ、宜しく」
『自分はマルティムだ』
「マルティムね、また今度何かあったら宜しく頼むわ」
「それでしたら今すぐにでも如何です?」
「…何故?」

訝しげにこちらを見やるクラリエに満面の笑みで返してやると、今度は苦虫でも噛み潰したかのように顔をしかめたので軽く頭を小突いてやる

「貴方って人は…本当に失礼ですね」
「殴ったわね!」
「……まあいいでしょう…そんな態度を取っていられるのも今の内だけですよ」
「どういう意味?」

マルティム、そう名前を呼ぶのと同時に目の前に広がった景色
先程の理事長室とは一変して、そこは

「…森?」

薄暗く、空気の淀み具合から相当な広さと歴史を感じるが
どうも様子がおかしい

「………」
「さて、貴方にお会いして何日が経ちましたか?」
「1ヵ月くらいじゃないかしら」
「そうですね……と、いうわけで、そろそろ我々のお仕事も手伝っていただきましょうか」
「……奥村燐の懐柔だけではないの?」
「当たり前でしょう」
「私を塾に入れたのは資格が必要だからってわけではなかったのね、良かった」
「貴方のような規格外、資格なんてあってないようなものでしょう?」
「まあ、たし…」


でていけ
ころす


「………」

僅かに流れていた風がやみ、静寂が包んだ

ああ、先程の違和感はこれかと納得する

「攻撃的な悪魔でしてね、並みの祓魔師ではなかなか…」
「ニンフが悪魔?あれは女神の眷属では」
「まさか、木精(ドリアード)は歴とした悪魔ですよ……怖じ気づきましたか?」

その横顔があまりにも不満げだったので、挑発の意味も込めてそう言えば伸びてきた腕
何かを求めるように差し出されたその手に予め持ってきておいた袋を手渡す
中から出てきたのは多種多様な銃器
それらを取り出しては組み立て、懐にしまい込む

扱いやすくて大変宜しい…

「ああそうです、報告では100は軽いと」

手慣れた手つきで最後の拳銃に弾を装填し終えると鼻を鳴らして呟いた

「この辺りの住民はこの森を大事にしているのね」
「何故?」
「ニンフの森ではニンフの宿る木が枯れればニンフも死ぬからよ、森林伐採を繰り返していたらこの程度の森で100は住まない」
「そうですか、お詳しいんですね」
「………」

無言で足を前へと進める
しかしすぐに振り返るとつまらなさそうに吐き捨てた

「女神を殺るのは気が乗らない…何か報酬がなければ割に合わないわ」
「女神ではなく“悪魔”です……まあいいでしょう」
「それから」
「まだ何か?」
「死体で構わないわ、森の中にでも放り込んでおいて」

ああ、食糧ですか

「木精の血では駄目なんですか?」
「小さい頃に裏山のニンフの血を吸ったら3ヵ月寝込んだことがあるの」
「………用意させましょう」

言い終えると同時にメフィストは姿を消し、マルティムの気配も同様に消えたので帰りはどうすればいいのかと思案する
しかしそんな事を考えている暇があったらさっさとこの気乗りしない仕事を終わらせてしまおう
そう自分に言い聞かせ走り出した

肌を刺すような視線と殺気
体に圧し掛かる銃器の重み

数年ぶりの感覚に口角が上がった






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あきゅろす。
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