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「手騎士の素質があるそうじゃないですか」

おめでとうございます、嬉しそうに語る男を見上げ、雑誌へと視線を戻す

「ありがとう、でも素直に喜べないわ」
「何故です、貴方からしてみれば悪魔の召喚など…」
「そうなのよ…悪魔を召喚できた時は死ぬほど嬉しかったわ、でもどうして召喚できたのか仕組みが分からない、だから“素直に喜べない”」
「……まあ、いいじゃないですか、貴方の元いた世界とはどうやら次元が違うようですし」
「………そう言えば、称号取得試験って具体的に何をすればいいの?」

ファッション雑誌など見るものではないな、内心でそう呟いて投げ捨てる
ガリガリの少女達が笑顔でポーズを取ってるだけで、面白くはない
唯一面白かったのは“男女の意識調査”というページくらい
まあ、そんなもの見た所で塾に通う少年少女には当てはまらないのだろうが…
目の前の男なんてそれ以上に…先程男が言ったように、本当に次元がどうのという話にしかならない

「秘密です」
「………」
「睨まないでくださいよ、言ってしまったらつまらないでしょう?」
「……こんな事になるくらいなら、ニンフ、何体か残しておけば良かった」
「まあ言うだけなら結構ですが、今後とも能力の出し惜しみだけはやめてくださいね」

微笑み付きでそう言うと、クラリエが投げ捨てた雑誌を拾い上げてパラパラとページを捲る
その一連の流れが妙に手馴れているので思わず唖然としてしまった

「どなたに頂いたんですか?」
「…買ったの、奥村燐と雪男の3人で出かけた時に、他の生徒が買っていったから…どんなものかと思って」
「こういう格好に興味がおありで?」
「ないわ、何だかんだ言ってこの“ユカタ”とやらを私は気に入ってるし、他に着るとするなら、そうね…軍服がいいわ動きやすくて」
「気に入ったのなら良かった」

ふと、話を逸らされた事に気づく
もう一度しつこく尋ねてみてもいいのだが、そんな気分でもない
小さくため息をついて横になると、さらりと撫でられる感覚

「メフィストは私を猫か何かと勘違いしてるわね」
「まあ、実質貴方は私に飼われていると言っても、大した違いはないですしね」
「………それどういう意味?」
「可愛がってあげても結構ですよ、って意味です」

『いう事をきけば』が抜けているに違いない
全くとんだ悪魔だ

「イェニやシェイタンに会いたい、貴方といると疲れるわ」
「何です?その、イェニとかシェイタンというのは、飼ってたペットか何かですか?」
「魔法使いと悪魔の間にできた子供が新血(イェニ)で、純粋な悪魔の子供は黒血(シェイタン)…懐かしいわ、よくお母様が召喚した悪魔といたずらに森に入ってはニンフを追い掛け回して怒られたものよ」
「そのシェイタンとやらなら目の前にいるじゃないですか」
「貴方じゃ駄目よ、だって貴方、私に隠し事ばかりしている気がするもの、彼らは隠し事をしないから」
「……なるほど」

冷たい笑みに思わず笑った
何だ、そんな顔もできるのか、と言い返してやりたかったが叶わない

「……どうかしたんですか?」

タイミングがいいのか悪いのか、私用でやってきたらしい雪男が二人の険悪な雰囲気に怪訝そうに眉を寄せるのが見えた
どうかしたのか、という問いに対してへらりと笑みを返せば思い切り抓られた頬
横目でメフィストを睨めば先程と変わらない表情にもはや笑う事しかできない

「覚えてなさい」
「何がそんなに気に障ったのか分からないわ」
「全く……部屋に行ってなさい」
「そうさせてもらうわ」

ただ扉を出る直前、投げかけられた台詞には肩を落とさずにはいられなかった

「試験、楽しみにしておくんですね」
「………それってどんな脅し文句よ…」






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あきゅろす。
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