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博士とその弟子
ある昼下がりのこと



「博士は神様っていると思いますか?」



太陽が真上より少し傾き、外から穏やかな風とゆったりとした時間が部屋の中に流れ込む。

部屋の至るところに本や紙が積まれ、風に乗って何枚かが床に落ちるが、
何故か、何も無いような、開放的な感じがする。


そんな部屋の中でぽつりと言葉が投げかけられた。



「君はどうなんだい?」


それを受け取った博士は椅子に体をうずめ、机の上のカップを手にとった。

即座に言葉を投げ返されたものの、その博士の弟子である少年は散らばった紙を拾いながらゆっくりと答えた。


「私は…いないと思います。神は人間の創造の産物だと。」


そうか、と博士はカップの紅茶の香りを味わい、口に付けた。


「僕は、時と場合によってだよ。」

「それはズルくありませんか」

「合理的と言ってほしいなぁ。僕は必要なときにそれを信じ、利用しているだけだよ。」


確かに合理的ですね、と弟子は集めた紙を手荒くまとめた。


「基本的にはどうなんですか?」


博士はまた一口紅茶を飲んだ。


「基本的にはいないと思っているよ。」


また一口飲んだ。


「でもね、これは僕の世界においての話なんだ。」

「博士の世界?」


弟子は紙を集める手をとめた。


「というと?」

「僕個人の世界、つまりは僕の見ているこの世界にはいないということだ。確かに、ベースはこの足を付けているこの世界だが、一人一人は違うのだから見ているこの世界もそれに応じてたくさん存在しているんだ。」


博士はカップを机の上に音を立てずに置いた。


「だから、神を信じる者の世界には確かに神はいる。そもそも絶対的な創造主としての神ではなく、救世主としての、自分にとっての神ならどこにでもいるだろう。」

「しかし、結局は人間の思想なんですね。」

「人間の創造は無限大だよ。政治の、軍事のために創造されたものでも、一個人が必要としたものでも、生きていくために必要とされて生まれたんだ。その者たちが信じれば本当になるんだよ。」


博士はカップに残った紅茶を飲み干した。
弟子は少し眉間にしわをつくり言った。


「博士はロマンチストだったんですね。」

「リアリストはロマンチストなんだよ。」


カップを机に置き、周りの紙を茶色に染めた。
眉間のしわが深くなった。


「じゃあ私もロマンチストなんですかね。」


さぁ?と博士は広がる茶色を見つめ、そして弟子に向かって口の端を上げ、言った。




「これも僕の世界の話だから」







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っだぁぁぁぁあああああ!!

今日、突発的に思いついたので勢いで書いてみました!

他のを進めたいのに!!


2009.2.6(Sat)

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