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不可思議な国のアリス
赤と白の素直な日


リィ・・・リィイン


どんなに遠くにいてもこの音だけは聞こえてくる。
この音は女王が白ウサギを呼ぶときに使う鈴の音。
この音が聞こえると何をしていてもすぐに女王の元に行かなければならない。
否、何をしていようがすぐに駆けつける。
この音は女王が白ウサギを必要としている証拠。

(一体なんでしょう。こんな時間に)

城の仕事からやっと解放された白ウサギは、
少々ぼやきながら女王の部屋に続く長い廊下を急いで歩いていた。
あたりは真っ暗。
とっぷりと日が沈んでしまったこんな時間に用があるのは珍しい。

(何かありそうですね・・・)

疑問と期待が女王の部屋へと足をより急がせる。


コンコン


「女王。どうかなさいましたか」

「まぁ入りなさい」

「失礼いたします」

ゆっくりと扉を開けると、なぜか女王は顔を少し赤くさせてこちらを向いて立っている。構えているように見えるのは気のせいだろうか。
そして、その女王の前には赤いリボンで結ばれたカラフルな箱が置いてあった。

「女王、どうしたのですか?」

「・・・こ、これなんだけど」

「何ですか」

「〜〜見て分からないの!?箱よ!おお・・・落ちてたの!!まだ中身は見てないけど、お前が引き取りなさい!」

「仰せのままに。中身を確認してもよろしいですか?」

「早くしなさい!!」

箱を開けてみると、そこには赤いマフラーと手袋が入っていた。
手作りのようで、所々糸が出ているが丹精込めて作られているのがよく分かる。

「マフラーと手袋ですね」

「見れば分かる!もう用は無いからさっさと戻りなさい!」

白ウサギが箱を開ける前に女王は後ろを向いてしまったはずなのに、箱の中身が分かるらしい。
そんな姿を白ウサギは微笑みながら見ていた。

「分かりました。帰らせていただきます。・・・あれ?」

・・・さっきから気が付いていたのだが、わざとらしく聞いてみた。

「このマフラーと手袋・・・私が女王にあげた香水の香りがする。あれは私特製で、一本しかないはずなんですけどねぇ」

女王はビクッとからだを震わせた。
そして振り向いた顔は真っ赤に染まっていた。

「き、きっと、ずっと部屋にあったから・・・」

明らかに動揺している。
そんな女王を見ているとついつい、からかいたくなってしまう。

「でも中身は見てないんでしたよね?・・・それにこの箱、どう見てもプレゼントの箱ですし・・・ねぇ?」

白ウサギは女王に近づいていった。
言葉で、体で、追い詰めていく。

「どうしてだろうねぇ、女王」

顔を近づけ、視界にお互いしか写らなくなったとき、


「〜〜〜うるさーい!!」


女王は白ウサギを突き飛ばし、箱もろとも部屋の外へと投げ飛ばした。

バタンッ

扉が勢い良く閉められた。

「あいたたた」

廊下の床に頭をもろにぶつけてしまった。

「あんたなんか大嫌い!いなくなれ!あんたなんかのために作ってないわよ!!アホウサギ!!」

恥ずかしさと怒りを爆発させた女王の声が部屋の中から聞こえてくる。
いつもよりも酷い言われようだった。

「いじめすぎちゃったかな?」

少々後悔しつつも、部屋の中で泣いているだろう女王を見つめてしまう。
すると、泣きながら小さな声で何か言っているのが聞こえてきた。
兎の耳を持つ白ウサギには良く聞こえる大きさの声だった。

「ぐすっ・・・言い過ぎ・・・ちゃっ・・たかも・・・。でも・・・今日が何の日か・・・分かってないのか・・しら。・・・・・別にいいやっあんな奴!・・・ぐすっ」

(今日?今日が何の日か?)

白ウサギは首を傾げた。

「あ・・・そうか」

最近は多忙だったから、日にちを気にしていなかった。

「今日は4月1日。エイプリル・フールだっけ」

(じゃあ、さっき言っていた言葉は嘘?)

言葉の逆の意味を考えると少し白ウサギの顔が赤くなった。

「こういう日を使ってプレゼントなんて、女王らしいな」

箱の中を見た。よく見ると赤いマフラーと手袋には、可愛らしい白い兎のマークが付いていた。

「子供っぽいな、女王は」

赤いドレスを着て、同じく赤い髪をなびかせ、いつも大人のように振舞っているが、
時折見せる子供っぽさがとても可愛くて、愛しいおしかった。

部屋の中からまだ女王の泣く声が聞こえてくる。

謝りに、そして慰めにいこう。
泣いている女王を一人にさせることはできない。
何より、女王の笑う顔が見たい。

白ウサギはマフラーと手袋を身につけ、女王の部屋の扉を開けて言った。

「女王、今日はとても寒いですね。自分の部屋では凍え死んでしまいますので、今日はこちらで寝ても構いませんか?」

女王はベットの上でうずくまりながら、白ウサギのわけの分からないの言葉にぽかんと口を開けた。
しかし、すぐに気が付いた。

「仕方ないわね。・・・今日だけだから!!」

白ウサギはその言葉を聞いて、くすりと笑った。

「ありがとうございます」

扉を閉め、女王の部屋へと入っていた。



明日になればまたいつもと同じ、変わらない日だろう。

しかし、今日だけは素直になれる特別な日であった。





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はいはい、甘いですね。
このバカップルはどうにかならんのでしょうか?

せっかくのエイプリル・フールなので、
即興ですがつくってみました。

”「アンタのためじゃないんだから」
というツンデレな言葉を言いながらプレゼントする”

というようなバカっぽいものを作ってみようかなと思ったら、こいつらになりました。


春ですね。


浮かれているのは浮かれウサギだけで良いですよ。




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