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不可思議な国のアリス
不可思議な国のアリスV

仕方なく黒髪の少女はゴシックロリータな服を脱ぐ事にしました。ウサギの耳を生やした青年は、脱げといいましたが少女が代わりの服は持っていることも確認せず命令してしまいました。青年は少し戸惑っていました。しかし、少女は面倒くさいなー、と愚痴をこぼしておもむろに服の後ろへ手を伸ばしました。

「お、お前、木に隠れるとかしないのか!?」

青年はちょっと待てとでも言うかの如く声を荒らげました。
少女はそのような事は気にせずに、えいっ、と服に繋がっていると思われる紐を力いっぱい引きました。
青年は短く声をあげ、目をふさぎました。

しかし、まるで鉛の拘束具でもはずしたような音がウサ耳に飛び込んできしました。
それは少女の身に付けていたゴシックロリータな服がずり落ちた音でした。そしてゆっくりと目を開くと、どこに隠れていたんだと思うほどの量の布がそこにあり、少女はその布の砦の中央に立っていました。

その厚手の服から現れたのは、なんとも、こざっぱりとした服でした。白い半袖の服の上に青いベストのようなものを着て、赤いスカートに白いエプロンを巻いていました。そして少女は服の砦から出て、その服を掴むと背中のどこかへしまってしまいました。
それを見ていた青年は、この少女は人間でもないのだと、なぜか確信を持ちました。

「これでいい?」

少女はため息交じりに尋ねました。少女の声に青年は我に返り、「あ、ああ。」と返事をしました。

「まったく!服を脱がせるなんて!」
少女は何事もなかったのように、青年の行為にただ憤慨していました。

「そ、それでだ、お前の名前はなんていうんだ。」
「なんで?」
「外から来た者を記録するためだ。」

少女は『考える』ポーズをしました。

「考える必要なんて無いだろっ。お前の名前は?」
「…エジソン。」
「何を発明する気だ!?」

青年のいいツッコミに、思わず少女は親指を立てたくなりました。

「って違うだろ!お前の名前は!?」
「じゃあ、アリスでいいよ。」
「何だその、しょうがねぇなって顔!!」
「大人の事情によりそういう決まりでしょ。」
「それ禁句だろ!?」

黒髪の少女―アリスの暴言に青年は頭を押さえました。こんなに怒鳴り、怒鳴られをしたのは久しぶりかもしれません。アリスという少女といると調子が狂いました。そんな青年を見て、アリスは聞き返しました。

「レディーに名乗らせて、貴方は名乗らないのかしら?」

青年はこいつがレディーなのかと真面目に考えながら答えました。

「俺は、白ウサギと呼ばれている。」
「名前?」
「まぁな。それよりも、お前は直ちにここから出て行くんだ。いいな?」

アリスは口を尖らせてブーイングをしました。白ウサギはそれにイラつきを感じながら言いました。

「命の保障はできないからな。」

アリスは青年の纏っていた空気が冷たく変わった事に気がつきました。少しだけ圧倒されましたが、ここで引くわけにはいかないと、訳のわからない使命感が湧いてきたため

「それでもいいわ!もとから『保障』なんてあてになんかしてないから!」

と胸を張って言いきりました。
そうか、と青年は呟き、アリスにむかって、礼儀正しく一礼しました。

「私は女王の元へ急がねばなりませんので……、じゃあな。」

青年は森の中へ飛んで行きました。
青年の去った後、アリスが一人、道端に残されました。



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あきゅろす。
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