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不可思議な国のアリス
不可思議な国のアリスU

鬱蒼とした森の中、太陽の光は欠片となって地面を照らしていました。穏やかな時間と空気がともに流れ、聴こえるのは鳥の囀り、草木のざわめき、そして二つの足音でした。

トコトコトコ

トコトコトコ


トコトコトコ、ピタ。

トコトコトコ、ピタ。

「〜〜〜ええぃ!!誰ですか!?私の後を追ってくる奴は!」

ウサギの耳を生やした青年は先ほどから誰かが付いてきていることに気付いていましたが、遂に耐え切れなくなって後ろを振り向きました。緑の生い茂る中、そこには黒髪の少女が不敵な笑みを浮かべて立っていました。

「ふっふっふ。よく気が付いたな。」
「気が付くも何も真後ろを歩かれたら誰だって気付くだろ!!」

そうです。
黒髪の少女はこの青年のたった2メートルほど離れたところを堂々と歩いていたのです。おまけに、とても目立つゴシックロリータな服を着て、よく音が出るブーツを履いていました。この少女には尾行のセンスが皆無でした。

「で、貴女は何のために私について来ているのですか。」
「何のためって、ウサ耳付けた変質者を追ってきたの。ここは私の父が治めている土地なんだから、好き勝手されちゃ困るのよ。」
「その変質者って俺!?お前の方が変だろ!」

二人は互いの服を見比べました。
黒と赤を基調としたゴシックロリータな服を着ている少女。
男にしては長髪の白い髪にウサギの耳をつけ、赤い燕尾服を着て、口調が丁寧だったり乱暴だったりする青年。

…お互い様でした。

「そんなことより、先刻、貴女は父親がここを治めていると言っていましたか?」

青年は話を切り替え、少女を見据えて尋ねました。何か気に掛かる事があったのでしょうか。
少女は手を腰に当て胸を張って答えました。

「ええ、そうよ。だからウサギの耳なんかを付けている変質者を生けどり…」

そこで青年は目を丸くして大きな声を出しました。

「まさかお前、人間なのか!?」

思いもよらない言葉に少女の方が目を大きく丸くしました。

「はいぃぃ?」
「そうでなきゃ、今までの意味不明な言動の理由が分からない。ここの土地だって女王が…」

青年は眉間にしわを寄せて一人でぶつぶつと呟いています。少女にとってもこの青年の言動が意味不明なことばかりなので、頭の中が「?」で埋め尽くされていきました。
そして青年は少女に振り向きました。

「おい、お前。今すぐその服を脱げ!」
「え。そんな趣味もおありで。」

綺麗に少女の頭の中心にチョップがきまりました。




「いいか、ここはお前がいるべきところではないんだ。そういう派手な服は女王以外着てはいけない。それに目立つ服は誰かに見つかりやすいし、そうなったら面倒だ。そもそも人間がいると知られたら、女王がお怒りになる。」
「確かに私は女王様がいるような、そういう世界は理解しがたいけど。」

青年が笑顔で、指を揃えた手をゆっくりと振り上げました。
少女も笑顔で、どこからか出したヘルメットをゆっくりと装着しました。

いつの間にか鳥の囀りが止んでいました。



2009.3.5(Thu)

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あきゅろす。
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