01
ポーン……
その瞬間、時計が正確に30日から31日へと日付変更されたことを知らせる音が響いた。
深夜0時。
ハロウィーンの始まりである。
キィ…と小さな音を立てて扉が開かれた。
それは小さな音で、部屋の主は気付かず夢の世界にいるようで平和そうに寝ている。
そして開けられたドアから影が二つひょっこり現れた。
「……寝てる?」
「しし、寝てる寝てる」
ハロウィンに出て来る悪戯妖精宜しく部屋に侵入したのは由紀とベルフェゴール。
そして侵入した部屋は彼らの兄にあたるスクアーロの部屋だ。
毎年、ヴァリアー一家のハロウィンは日付けが変更された瞬間から始まる。
そして大抵最初の犠牲者はスクアーロと決まっているのだ。
これは毎年のことなのに彼は全く勉強しない。
今年も豪快にいびきをかいて寝ている彼は、去年のハロウィンの惨事を全く憶えていないのだろう。
由紀とベルフェゴールは目を合わせニッと笑う。
そして小さな声で囁いた。
「「Trick or treat」」
「ぐがぁぁぁーーー」
「「…………」」
勿論返事などあるはずがない。
「どうやら悪戯でいいみたいだね、スクは」
「しし、アホ鮫はMだから悪戯してほしーんじゃね?」
くすくす笑う二人は更に口角を上げ、長兄に悪戯を施した。
「……ふぅ、出来た。これ去年に比べたら可愛い悪戯だよね」
「しし、オレらやっぱ天才だよな」
一仕事終えたかのように満足げな笑みを浮かべた二人はそのまま部屋を出ていった。
あとには悪戯されたことに全く気付かぬスクアーロと、枕元にキャラメルが一つ置いてあるのみ。
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