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陽の残滓が煌めく(土方+沖田)



「あっちぃ…」
「暑いですねぇ」
「何でこんなにあちぃんだ」
「そりゃ勿論夏ですから」
「夏だからか」


当たり前の答えが返ってくるが、更に言葉を返す事もなく、ただ納得する。
外では、雲一つとして見当たらない快晴の昼模様。
太陽の光が燦々と降り注ぐ中、木陰では夏の風物詩とも呼べる蝉の大合唱が行われいる中、畳の上で大の字の恰好で寝転んでいる土方の姿と、傍らで団扇を扇いで涼んでいる沖田の姿があった。


「所で総司」
「何ですか土方さん」
「一人で涼むんじゃ無くて、俺に扇いでやろうかと言う気持ちっていうのは無いのか」
「えー?全くと言って無いですねぇ」


あははと笑いながら沖田は団扇を扇ぐ。
何歳になっても悪戯を楽しむ少年の様な彼なのだが、土方自身、相も変わらずむきになる。


「てめ…、それが歳上を敬う態度か」
「ちゃんと敬っているじゃ無いですかねぇ?、現に土方さんって呼んでるじゃ無いですか。“さん”付け。うん、立派に敬ってますって」


飄々と言ってのけるその姿。
更に清々しい程に自信が満ちているとでも様な態度。しかし、その顔は面白がっている事が解る含んだ笑みを笑みを浮かべていた。


「じゃあ勇さんが来てもその態度を崩さねぇんだな?」
「なぁにを言ってるんですか土方さん。先生は別格に決まってるじゃないですか」
「はぁ?」
「おう、二人ともこんな所にいたのか」
「勇さん」
「先生」


噂をすればなんとやら。
丁度、二人が居た部屋の目の前を近藤が通り掛かる。


「いやぁ、やはり外は暑いなぁ」
「今土方さんとそんな話をしていた所なんですよ」
「てか勇さん、今俺らを探してたか?」
「おぉ、そうだった。こんな暑い時こそ一汗かこうかと相手をして貰おうかと思ってな」
「………勇さん、正気か」


暑さに参っていると言うのに、稽古の相手をしろと言うのか。
げんなりとした表情を浮かべる土方の隣で、元気良く立ち上がる総司。


「やりましょう先生。土方さんは暑くて暑くて動けない様ですから、ねぇ?」


挑発とも取れる言動。
現にちらりと此方に視線を向けているのがその証拠だ。


「…っ、上等じゃねぇか総司!後で泣き言言っても知らねぇからな!」
「やる気になってくれるのは嬉しいが…トシ、私の存在を忘れないでくれよ」


そして平和な昼下がりが過ぎて行く…―。



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あきゅろす。
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