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白雪の悪戯遊び(土方+α)



「寒ぃ…」


手を擦り合わせながら囲炉裏に当たっているのは土方歳三。
珍しく雪が積り、冷たい風が扉を揺らす。
囲炉裏に火をくべながら、遠くから聞き慣れた笑い声が聞こえた気がした。
それも一人では無く、複数の笑い声が重なっていた。


「こんな寒い日に何やってんだ?」


自然と足を向け、寒い廊下を出ていく。
少し離れた中庭に見つけた複数の人影を認めた。
その中には、がっしりとした身体付きでいつも厳しい顔をしている近藤が破顔して雪玉を作り、原田や永倉に投げ付けている。
その中に藤堂や沖田の姿もあった。
その珍しい光景に土方は思わず唖然としてしまった。
土方の存在に気付いた近藤が笑みを浮かべながら話掛ける。


「おう、歳。おめぇもやらねぇか」
「勇さん…何をやってるんだ」
「見て分からねぇのか?雪合戦だ」
「いや、それは分かるんだが…」


わざわざこんな寒い時に遊んでいる近藤達の行為が寒さに弱い土方にとっては理解し難かった。
その真意が分かったのか近藤は軽くため息をつく。


「だらしないぞ、歳。それにたまにはいいもんだぞ」
「あぁそうかい。俺はこんな寒い日は部屋一人で暖まってるさ」


背を丸めながら、部屋へと戻って行こうと足を向けると、どさっと言う音と共に後頭部に衝撃が走る。


「痛っ!」


思わず振り向くと沖田がくすくすと笑い声を立てていた。


「うわぁ土方さん、こんなのも避けきれないなんて格好悪いですよ」
「総司…てめぇ…」


どすの効いた低い声を上げる土方。
だがそんな事も構わず、沖田は二発目、三発目と土方に向けて雪玉を投げ込む。
流石に投げて来るのが分かっている為かしっかりと避けたが、別の方向から四発目が投げ込まれた。


「あぁ、悪いな歳さん。わざとじゃないんだ」
「永倉…おめぇもか」


とうとう我慢が出来なくなったのか、土方は庭に降りて、雪玉を投げる。


「土方さんも参加ですか。僕に当てられますか?」


沖田の何処か挑戦的な口調に思わず、土方は怒鳴り返す。


「いい度胸だ。覚悟しとけよ総司」


いつの間にか土方対沖田の真剣勝負となり、他の者達は傍観する側へと変わっていた。
その中で藤堂が楽しそうな声でぼそりとが呟く。


「なんて言うか、土方さんも大人気無い所ありますよね」
「まぁ、そんな所が歳の面白い所じゃねぇか」



ほのぼのとした空間の傍らで、一対一の雪合戦は続いていた。





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