差し込む光は緩やかに(藤堂)
「平助、ちょっと総司を呼んで来てくれないか」
つい先程、土方に呼び止められた平助。
ついでに頼まれたのは人探し。
特に用事も無かった為に快く了承した。
「さて、総司は何処にいるんだか」
試衛舘の中を見回ったが、何処にも居る気配は無く。
ならばと外を見て廻る事にした。
昼の日差しが差し込み、少々汗ばむ。
そして試衛舘の直ぐ目の前に青々と育つ木の木陰に一つの影を見つけた。
(あんな所にいたのか)
静かに近寄ると、木に寄り掛かる様に背中を預け、呑気に昼寝をしていた。
「総司、土方さんが呼んでるよ」
その言葉に返答はなく、小さく寝息を立てているだけであった。
肩を揺さぶっても起きはしない。
「仕方ないなぁ」
一言呟くと平助は総司の隣に腰を掛ける。
通り過ぎる風を感じ、静かに瞼を閉じる。
(心地がいい…)
そしていつの間にか平助自身までも夢の中堕ちて行った。
その後、歳三に見つかった二人は道場の中で数時間に渡り説教を受ける事になることをまだ知らないでいた。
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