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玉響に映る月の揺らぎ(土方+山南)


新撰組隊士の宴会が行われた。
いつもの事ながら、原田が悪酔いしつつ中心で宴会を盛り上げていた。
周りでは手拍子を行う者や、部屋の端で談笑する者、我関せずを貫き静かに酒を飲む者など様々だ。
そんな中で約一名の姿が見当たらず、それに気付いた山南が外に出た。
冬に近づいて来ているこの時期は、夜風が冷たい。
そんな吹き抜けの廊下で一人、土方歳三が空を見上げていた。


「歳、酔ったのかい」


微かな笑みを浮かべながら近づいてくる山南の姿を捉え、土方は軽く目を見開く。


「……酔ってなんかないさ」
「本当かい?」
「本当だ」


わざわざ強がらなくてもいいのにと思いながら笑みを深める。
山南の笑みを認め、僅かに不貞腐れる。


「何だよ」
「いや、何でも無いさ」


そんな他愛の無い会話をしながら、山南は土方の隣に腰を掛ける。


「サンナンさん、せっかくの宴だって言うのに楽しまなくていいのかい」
「こんな所に居る歳に言われたくないなぁ」
「今夜は月が綺麗だからな」


そして再び空に視線を送る。
土方の言う通り、確かに今日は見事な満月が浮かんでいる。


「綺麗なものだな」


無意識のうちに感嘆が溢れる。
そして、二人の間には穏やかな空気が流れる。
沈黙を先に破ったのは山南。


「昔を思い出すね」
「そうかい?」
「世の中は変わって行く、場所も人も」
「……そうだな」
「歳は変わってくれるなよ」
「急に何だよサンナンさん」
「いや、何となく思っただけさ」


再び静寂が訪れ、冷たい夜風が通り過ぎた。

「さて、そろそろ冷えて来たし、戻ろうか」

立ち上がり、宴の中へ戻って行った山南。
その背に、小さく、今にも掻き消えそうな呟きを送る。


「変わりはしないさ」


過去も今も未来も。
例え時代の波に呑み込まれそうになったとしても、自分は変わらない。
誓いを月に掲げるかの様に、土方の眸は強い光を宿していた。




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