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あの湖、オレンジ色の鉄橋の


(name change)


俺の彼女、○○っちはちょっと変わってる。いや、変わってない?ん?変わってる?
さらさらキューティクルの髪の毛にぱっちりおめめ、すっと通った鼻筋とちっちゃくて細い指から肩、きゅっとくびれた腰、すらりとした足!正直めっちゃくちゃかわいい!
(顔で選んだんじゃないんだけれど)

じゃあなにが変わってるかって、俺のこと一回も「かっこいい」って言ってくれたことがないってとこ。

俺の新しい写真集が発売して、女の子たちが学校に持ってきたそれに、サインを求められることが多くなった今日この頃。
そんな時、例外なく○○っちの周りの女の子たちも俺の写真集にサインを求めてきた。

その日○○っちの教室の前を通りかかると、俺の写真集を取り囲んでる女の子たちの中に○○っちの姿が!なんだかものすごい動悸がして、おもわず扉の影に隠れてしまった。な、なにしてんだ俺。

そして聞こえてくる教室からの声。

「ねえねえ!どの黄瀬くんがかっこいい?」
「えー?私はこれかなー?」
「あ、爽やかな感じね!」
「私はこれ!」
「上半身裸じゃん!えろいよー!」
「でもすごい筋肉ー!」

「ねえ、○○は?」

うわ、なんだこれ、聞きたくないなー!って思ってたら案の定、

「んー、そこにはいないかな」

って彼女の声。なんスかこれ、間接的に失恋?ひどすぎない?

「えー?彼氏なのに?」

とか笑われてるけど彼女は「うんー」と濁すだけでなんにも言ってくれなかった。俺は酷く意気消沈して、そのままとぼとぼ部活に行った。多分ね、肩を落とすってこういうことを言うんだと思う。

立ち聞きしてたことには何にも触れないで週末、いつも通り彼女がうちに来て、まあゲームしたり漫画読んだり普通のおうちデート。
俺が赤いオーバーオールを着たひげのおじさんの操作をしている後ろでベッドに寝転んで彼女が見てるのは、
え、俺の写真集?

「ちょ!○○っちなにしてんスか!」

って思わず言ってしまった。なにしてんスかもなにも、俺の写真集見てんだよ。分かってるよそんなこと。彼女は写真集をぱたんと閉じてベッドに座り、立ち上がった俺を怯えたように見上げている。

「あっあの…ごめん」
「あの、○○っちさ、こないだクラスの女の子たちとそれ見てたっスよね?あのとき、その写真集の俺、カッコよくないって言ってたの聞いちゃったんス。ごめん。でも、俺、あの、」

って、彼女に申し訳ない気持ちと、なんだかよくわかんない濁りに濁った気持ちが口をついて止まらない。だって、俺そんなにかっこよくない?かっこよくなきゃ俺ってなんなんスか、ただのバスケバカじゃん。それも本望だけど。でも。

「あのね、黄瀬くん、」
「なんスか」

返事の声が無意識に低くなってしまう、態度悪いとおもう、今の俺怖いとおもう。ごめん、ごめんごめん。こんなはずじゃないんスよ、ねえ。

「黄瀬くん、すごく頑張って撮影してたの知ってる。ねえ、この写真撮るときは遠くへ撮影に行ってたよね、で、この時は、ほら、あそこの湖が好きだって言って、そこで撮ったんだったよね。」

そうやってするすると写真の解説していく○○っちに、俺はあっけにとられてしまった。なんで、そんなこと、ひとつひとつ覚えて、

「私ね、そうやって写真集作っていってたときの黄瀬くんがかっこいいとおもったの。だからこの中にはいないって言った。頑張ってたから、やっと写真集が出てすっごく嬉しかった。ねえ、私、カッコよくないなんて言ってないでしょ、おバカさん。」

目を細めて笑って、そうして彼女はベッドの自分の脇をぽんぽんってふんわり叩いて俺に座るよう促した。俺が座ると「それとね、」と続ける。

「写真集の黄瀬くんは、あったかくないでしょう?」

と、俺の肩に体を預ける彼女には、たまらなくなって唇落してやった。
本当ずるい、ずるいっス。



「私黄瀬くんがかっこいいからすきになったわけじゃないよ」
「えっ…じゃあ、なんなんスか?」
「えっ、」
「えっ?」
「えへへ」
「ええ!?」

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