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Love!
14.別れる


最遊記外伝













「・・・じゃあ、ここで。」

「え・・・」



「私は、ここに残るよ。」


西南館で立て篭っている、最後の夜。
彼女は、藍姉ちゃんはそう言った。


「ッ、何でですか!」

「おい、天蓬!!」

「・・・本気?藍。」


俺らが驚いてそう尋ねると、藍姉ちゃんは当然だとでもいうようなそっけない顔をして頷いた。
天ちゃんが、膝をついた。
ケン兄ちゃんは、藍姉ちゃんの顔を見なかった。
金蝉は、ただただ真っ直ぐ見つめてた。どこか悲しそうだった。

それなのに、藍姉ちゃんはいつも通りにヘラッとしていた。


「・・・私、ここが好きなんだもん。
酒は旨いし月はいつも出ているし。
この楽園から、出る気はないから。」

「・・・。」

「・・・ねぇ、下界の桜はどうすんだよ。」

「悟空・・・」

「皆で見に行くんじゃねーのかよ・・・
俺、姉ちゃんも一緒じゃないとヤだよ・・・
ナタクみたいにいなくなるのは、嫌だよ!!」

「・・・悟空。」


涙を流しながら叫ぶように言えば、影法師が自分を見下ろして。
ギュッと、抱き締められた。



『ウラッ、悟空ー!』

『わわわっ、止めろって!』

『やだね。』


俺が元気なかった時ガシガシと頭を掻き回していた手が、首に回されていた。
その腕は、手は、心は、いつも暖かかった筈なのに。


「・・・悟空、よろしくね。」

「・・・ああ。」


その時の俺には、凄く凄く冷たく感じたんだ。



















少し離れた所で、ド派手な爆発音が聞こえた。
その音は昔、任務帰りに見た花火に似ていて、懐かしさに頬が緩んだ。
捲簾がいつも腰につけていた酒を漆塗りの杯に注いで、窓辺に腰かけて桜を眺めていた。
膝に乗った天蓬の蛙の灰皿を撫でて、悟空に昔貰った萎れた花輪を頭にのせて、何も言わなかった金蝉に思いをはせた。
酒を一口。旨い。
でも少し辛かった。


「・・・ゴメンね」


意気地無しで。
心地よい世界が消えるのは分かってたの。
けど目の前で消えるのは辛くて、目をそらしたの。
楽園なんて、ないんだよ。
アナタ達が笑っていなきゃ。

フワリ、花びらが一片。
杯に映えて、2つ。
足音が、たくさん。




「・・・時間だね。」


そっと蛙を膝から降ろし、花輪を彼に被せてあげた。
酒をグイッとイッキ飲みして瓢箪をその横に置くと、瓢箪の代わりに細身の剣を携えて、後ろの桜を見上げた。
それはいつも通り輝いて―――


「・・・つまんないや。」

杯を窓からほおり投げて、左手でホルスターから銃を手にした。
威嚇と鍵を壊す為と存在を示す為に2、3発撃つ。
剣を抜いて、足で彼らが頑丈に封じた扉をブッ壊して、彼等の邪魔をする奴らに向かっていった。


―――パキンと、杯が割れた音がした気がした。
















別れる(でも永遠じゃない。)
また心地よい世界に
巡り会える事を夢見ながら









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外伝って、色々考えさせられますよね。
生ってなんだろう、とか。
残念ながらコミックス派なので今の状況が分かりませんが、願わくば彼らが最期の時まで精一杯生きてくれますように。








2/9 猫兎

[*Past][Future#]

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