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上を向けば真っ青に輝く空があり、寒くも暑くもないこの季節は入学シーズンだった。

だが此処、屋上では二つの影がさも自分には関係が無いかのように校門を見つめている。



「ははっ…見なよ、いざや。人がゴミのように居るよ」



いざやと呼ばれた青年は振り向き、指を指した方を見た。


「………。」


無言でひたすら同じ方向を見ているいざやに不思議そうな顔をして「どうしたの?」と聞けば



「捺樹…あれを見ろ」



顎で見ている方向を捺樹という青年に教える。捺樹は身を乗り出してソレに視線を移すと…


そこには入学してきたばかりと思われる二人組の男女が。


「?あの二人組がどうかしたの?」


「………。」


また黙りこんでしまったいざやにふぅ…と息を漏らす。その時―――……








ガチャ







「…あ、入学式に居ないと思ったらやっぱりここに居ましたか。いざやさん、捺樹さん…。」




「「…黒姫か……、」」


なんだ…つまんね。


と、二人が同時に思った瞬間それに気付き


「ちょ…っ!!何落ち込んでるんですか!!止めて下さいよ!」



黒姫と呼ばれたこの少女は屋上のドアを力強く閉めて、ぶつぶつと文句を垂れながら二人の青年に近付いた。


「ていうか、あなた方のせいで先生に呼び出しくらいましたよ。」


「それはお前が悪い。」



即答。




「違います!私がいつもいざやさん達と一緒に居るから居場所を知ってると思って聞いてきたんですよ!!」


「そんなの知らなーい」


「ムキー!」



捺樹も一緒になってクスクスと笑いながら黒姫の反応を楽しんでいた。


「もういいですよ!!」



ピリピリとした黒姫を無視して、いざやはそういや…と声を漏らした。


「リクの野郎はどこ行ったんだ?」


「あー…りくさんなら
後輩に知り合いが居るとの事でその人に会いに行ってるそうです。」



「…ふーん、興味ねぇな。」


「いざやさんが聞いてきたんじゃないですか…」

なんだこの自由人は…。


半分疲れ気味で応対する黒姫に如何にも詰まらなさそうにチッと舌打ちをする。

その瞬間思い出したかのように夏樹が


「あ、そうだ黒姫。何か面白そうな子居た?僕ら式に行ってないからあまり入学生見てないんだ。」



「嘘つかないで下さいよ、知ってますからねー。ずっとここで新入生を眺めてた事。」



いや…観察してた事、か
と、言い直す際に目線を上にあげるとニヤニヤとした捺樹がそこにいた。



「黒姫のくせに中々鋭いじゃないか(笑)」


「黒姫くせにって何ですか…、くせにって…」


黒姫がうなだれていると背後からくつくつと笑い声が聞こえてくる。言わずともそれはいざやだった。

「……だが、まぁその反応は“お気に入り”は出来なかったようだな((ニヤリ」


「ぅぐっ…!」


黒姫は図星を突かれたといった表情を見せるとなんで…と、小さく呟いた。


「だから最初に言っただろ?夢なんざ見るだけ無駄だって。…黒姫事態が無駄だけど(笑)」


「酷っ…!!Σていうか、なんで理想な子が居なかったってわかったんですか…」



「さぁ?お前がわかりやすいだけだろ?」


「…ぅう…」


最悪…




「一体なんの話し?」



「嗚呼、捺樹は確かあの時居なかったか…」



「私が入学式前にちょっとした理想の後輩を語っていたらいざやさんが『そんな奴実際に居ねぇよ。現実を見ろ』って…、そこで口論になり賭をしようと…」



「それで黒姫が惨敗だったんだ(笑)」


「……はぃ…。」



「一体何を賭けたんだ?」



チラリといざやを見ると怪しい弧を描き、黒姫を見下した目で話した。



「寿司。」



「寿司?……へぇいいなぁ、それって僕もご一緒して大丈夫かな?」


クスクスと笑いを堪えながら黒姫の方を見ずに問う。



「…え…っ!!?」


何ソレ、
聞イテマセンガ?!



「嗚呼、いいぞ。」


「えええっ!!!?Σ」



「ありがとー♪」


黒姫の事には一切触れず…つーか無視を決め込み、勝手に話しを進めた二人。





「「まぁ、つーわけで、ごちになるから(笑)」」


ぽんっと音を立てて黒姫の肩に2つの手が置かれると唖然とした黒姫が目をまん丸にして固まった。








…――黒姫が絶叫するまで後20秒――…








…――りくという青年が戻って来るまで後10分―――…








…――黒姫が逃げ出すまで後30分―――








…――例の二人組と出会うまで後――……












「どうやら、また五月蝿い奴らが増えるのか…」



ふっと笑みを浮かべるいざやに誰1人とて気付く者は居なかった。




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あきゅろす。
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