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君と見た世界は
B
砂時計が多分怖い。
時が計れるのが怖い。
時に置いていかれてしまうから…。
「紫、良かったんですかね。行かないで…」
「そんな震えてたら無理だろ」
あとから迎えに来てもらえるから、休めと言われてるから、反対に今は行かない方がいいだらう。
「怖くないんですか?紫は…」
「お前だけさ」
長い時が怖い。
生きてる事さえ辛い。
目を覚まし、神経を使い、頭の中に記憶を入れるのが怖い。
全ての時が怖い。
「違う…僕は…僕は………」
時が怖い。
「お前だけさ…」
死ねない身体を持ち、時が怖いと思うのは…。
言われると黙り込む勇騎。
「お前は俺に与えたモノ…分かるな?その代償も忘れて無い筈だ。」
この代償。
此処に居る代償。
「お前はその苦痛が此処に居る為の代償だ。死にたくてもこの旅が終わってからでも良いだろ」
菩薩と約束した。
この旅が終わったら、勇騎の死ぬ術を教えくれる。
この苦痛の命が終わる。
「そうですね…。僕は此処に居て良いでしょうか……」
「八戒言った事…覚えてるだろ?」
うんと頷く。
「僕はいつか…殺してしまう。力の加減が分からないんですよ。」
「だあああッお前はいつもヘラヘラしといたら良いんだ。ヘタレになんな」
落ち込むなと言う意味だろう。
だから笑ってやると「馬鹿にしてんのか?」と頭を殴られた。
「馬鹿になんてしてませんよ…。」
なんでこの人はこうかなと頭を撫でる。
あの時出会ってから少しも変らない。自分を魔人扱いしたこの吸血鬼。
あの大木に封印されてる時会った時そのまま。
「喜ばしい事だと思ってるんですよ。長い時を経て、貴方と歩めるのを」
変らないと感じ、時間が自分と同じ様に止ってる。
「そうか」
ガブッと首を噛む。
痛いともがく。
離す気ない紫。
「え?」
ゾワリッと全身が舐められた様な感覚。
「こ、江流ッ……!?」
三蔵の中から血が大量に流れた。
三蔵の中にあった自分の血が流れた。
怖い。
背筋が凍る。
感覚が薄れるが、何故か音だけが大きくなる。
「勇騎…?」
「紫!江流がッ…… 」
青ざめた顔で言う。
この世界に来てから情緒不安定だ。
「分かったから…どうす………おい!」
完全に固まる。
目が完全に竜になって身体の半分も持ってイカれてる。
ビリビリッと背の服を破って羽が生える。
「行きますよ…」
「分かったよ、騒ぎになっても知らないからな!」






巨大な影が村に現れた。
なんだ?大きい雲が太陽を隠したのか?とそこに居た村人は空を見上げた。が、そこには雲は無かった。
巨大な竜が空を駆ける所だった。
蒼色の鱗に大きな翼。
それは直ぐさま、遠くに消えてしまった。
「おいおい、やっぱり見られたぞ」
紫は言うが見られない方がこの巨体ではおかしい話だ。
翼の二枚の長袖は約10メートル。
身体は頭の先から尻尾は4メートル程。
―煩いですね。これでも僕は小さいんですよ!
頭に直接ガンガンと響いてくる。テレパシーとか一般に言われるモノだ。
言う通りで、他の竜達は二十メートル近い。
勇騎がこの様に小さいのは謎だが、多分身体の何処かで力がセイブされてしまってるらしいと一度聞いた。
「分かったらそんな怒るなって」
背中の上で紫は叫ぶが、鞍が付いて無い為に乗心地は最悪だ。
鱗は硬いし、風は痛い。
「この辺だ。勇騎高度下げろ!」
そう言うと勇騎は高度を下げる。
地面から3メートルくらいで飛ぶと、何か見えて来た。
「あれって紅劾子って奴じゃぁ…うわっ!?」
いきなり早くなって振り落とされそうになる。
オオオオンッと機械音によく似た声が響いた。
紅劾子に食らい付こうとした様だが通り過ぎた。
なんだ!?と紫が紅劾子を見ると血塗れで倒れて居る。
余所見をして居ると横から強い衝撃が来て勇騎の上から落ちる。
―紫!?
築いた勇騎が地面に下り立つと紅劾子の返り血だろう血を大量に浴びた悟空が笑って立って居た。
「くそっ…また…自分を無くしてやがる。」
あまりにもいきなりな不意打ちだったが、さすがに効いた。
前よりより禍々しく、より早く、強くなって居る。
「え?紫さん?じゃぁ…あれは……勇騎さん!?」
八戒の声が聞こえて勇騎が向くと三蔵を抱いた八戒が砂塗れで倒れて居た。
「でかっ!?」
地面に這いずる悟浄は見上げて驚いた。
「情けないな」
地面に身体を寝かしてもがく悟浄を見て溜め息。
「勇騎、お前は三蔵を見てやれ、俺はコイツを止める。」
―分かりました。無理は…しないで下さいね。
竜の身体は燃え出して小さくなると半竜の着物を来た勇騎が現れる。
八戒と三蔵の所まで駆け寄ると目を見開いた。
「すみません、僕が付いて居ながら…」
八戒が謝るが多分聞こえては居ないだろう。
「江流……。」
座り込むと傷口を触る。
何かの毒だと築くが、それより三蔵の消耗が酷い。
魔法の術を唱えると、淡い緑の光りが三蔵を包んだ。
「毒も傷も完全に除去しましたが……残りの問題が悟空ですね。八戒、江流をお願いします。」
紫の所まで駆ける抜ける。
「どうだ?三蔵の様子は…」
「命に別状はありません。それよりこれが問題です。」
二人に殴りかかる悟空。
勇騎と紫は避ける。
が、この炎天下と足場が悪いのか紫の動きが遅い。
昼間はやはり吸血鬼が半分入ってるせいで本調子ではない様だ。
「くそっ…勇騎!動きを封じろ!」
「はい!」
砂が岩の様に堅くなり悟空の手足に固まる。
「お゛お゛お゛おおっ!!!」
バキバキッとヒビが入る。
「長く保ちそうにねぇな。どれだけ馬鹿力なんだ。」今まで簡単に破られはしなかった。
「低ランクの縛術ですが、こんな短時間で…………」
「勇騎!おい!壊れかけてるぞ!」
「煩いですね、悟空…痛いでしょうが怒らないで下さいね。」
鎖が伸びて悟空を捉えた。
それを見て紫が悟空の頭に金固をかけた。
髪が元々の長さになり、禍々しい妖気が消える。
「良かったと言いたいが、悟空…馬鹿だな。」
紫は倒れてる悟空を見下げる。
「不本意だが此処は引かせてもらうぜ、紅がこれじゃぁな。」
独角史は紅劾子を担ぐ。
「僕が逃すと思ってるですか……?」
チリチリッと痛い程に空気が鋭くなる。
「勇騎さんやめて下さい。三蔵も悟空もそんな事は望みませんし、三蔵に傷を追わせた妖怪はもう死にました。」
そう言われると勇騎は顔を背けた。
「人間の志向が分からないだとよ。」
悟空を担いで紫は言う。
「此処だと安静に休めないだろ、村まで飛べ」
空いてる腕で悟浄も担ぐ。
「分かりました…。」
完全に竜化すると地面に弱って倒れるジープをつついて頭の上に乗せる。
背中に悟浄と悟空を置くと紫も乗った。
「慣れないと落ちそうになるからきぃ―つけろよ。」
「はい……ってこれだけの人数運べるんですか?」
八戒は三蔵を抱き抱えながら言う。
「舐めんなって怒ってるぞ。そのまま噛み殺して欲しいか?だって」
テレパシーは語りかける人間にしか聞こえないがテレパシーで言う前に紫は察した。
「紫、鱗痛い」
「我慢しろ、ちゃーんと掴まってなきゃ振り落とされるからな」
翼を一度羽ばたかせると三メートルくらい上昇し、もう一度羽ばたかせた時には地面は数十メートル下だった。
高いと青ざめる紫以外の起きてる人物。
「早いですね。」
「早いがこの姿でいたら騒ぎになるからな。」
一応忠告する。

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