HEAD
6(R18)
 本当にこの化物は何を考えているのかさっぱりわからない。何も考えていない獣とは違うのだとは思う。でも、こんなにも読めないのは彼だけで、だから臨也の望む通り不様に踊ってくれる人間と一線を画している。彼を彼として認識し、欲したのはそれ故であるのだろう、悔しいけれど。
「──シズちゃん…」
 ゆっくり、ゆっくり慣れぬ内部を押し広げ、彼の常人とは異なる筋力で拒まれぬ僥倖に感謝しながら指を増やしていく。そうして三本目の指を侵入させた。しずおは触れてやってもいないのに彼の腹へとろとろと蜜を落とし、静雄はどこか焦点の合わぬ瞳で茫洋と天井を見つめ肩で息を吐いていた。
 さすがに童貞ではない臨也だが、初体験であるのならこんなにも快楽を拾い上げられる者には会ったことがなかった。他の誰に対したときよりも丁寧に時間をかけた自覚はあるが、それにしても…とは思う。非常に頑丈な体を傷めない術を、体が勝手に身に付けているのかもしれない。もっとも、ただの脳内麻薬の分泌でしかない快楽は、負荷を負荷として感じさせなくなるだけで負担の大きさには影響がないのだけれど。
 臨也はゆっくりと手を引き、彼の体内を探った指をぺろりと舐める。少し思案して、彼の内腿に手をかけて持ち上げ開かせた。
「っ…ざや──」
「入れるよ」
 端的な言葉で全てを察したらしい静雄の頬に朱が散った。しかし抵抗はなく、彼はぎくしゃくと顎を引く。共にベッドに戻ってきた時点で、きっと静雄なりに理解していたのだろう。育てる必要もない程に屹立した雄を拓かせた後腔にあてがい、体重をかけて無理やり押し込む。明らかに慣れてはいないのだろう静雄が小さく呻いた。当然力を抜くのも下手くそで、それでもじりじりと食い込んでいく。侵入するそばから痛いぐらいに締め上げられて、眩暈がした。
「ッ…シズちゃん、ちょっと──キツい…」
 脳天まで響く痛みに奥歯を食いしばって耐え、宥めるようにしずおを梳きあげる。辛うじて萎えないままでいたかれが、ふるりと応えた。ゆるゆると扱き上げるのに反応して、内部が不規則にうねりいざやを締め上げる。臨也が動くまでもなく持っていかれそうな刺激が面白くなくて、ぎりぎりまで自身を引き、一息に突き入れる。
 濡れた悲鳴と共に静雄の背がしなり、臨也の手の中でしずおがびくびくと跳ねた。
「あ…あ──」
 次第に本能に呑まれ、注挿を繰り返す。面白いように喘ぐ静雄にぎゅっと二の腕を掴まれた。怒りに翻弄された静雄だったなら間違いなく骨も筋もズタズタになっていただろうが、幸いにも快楽にとろけた静雄の握力は制御などできておらずとも強くはない。圧倒的な力で破壊の限りを尽くす静雄の、か弱いとすらいえる仕草に胸の奥が熱くなった。
 あの化物が臨也の前で全てをさらけ出し、こんなにも無防備に喘いでいる。もしかしたら今なら彼を殺すことさえできるかもしれない。そんなすごいことを、臨也に許したのだ。いや、きっと臨也にだから許したのだ。そう思うとたまらなかった。
「シズちゃん…」
 首元に顔を寄せ、喉仏に歯を立てる。互いの腹の狭間でしずおを圧迫した。


2019.4.1.永


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