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 明らかに納得していない静雄の気持ちを置き去りに、十年越しのセフレとの交際が始まった。
 といっても、特段大きな変化はない。ただ、静雄の携帯のアドレス帳に‘恋人’カテゴリーを新規作成し、そこへ今まで登録すらされていなかった臨也の連絡先を入力しただけのことだ。連絡の頻度や内容は以前のまま、街で行き会えばやっぱり殺し合う。何の変化もないはずだった。
 そもそも人外レベルの力を持つ静雄は、外見が少々優れていても女にはモテない。気のいい男の部類かもしれないが、臨也の気配は遠くから察し唐突にブチギレる者と遊ぼうとか、付き合おうなどと考える者はそれだけで希少価値があるとすらいえた。
 だから、付き合いはじめて数ヶ月。静雄の動向を捉え続けてはいても、全くそれらしい様子は見えなかった。
 それに安堵し、気の緩みかけた頃。
 街の監視カメラから採取した映像が臨也の心を震わせた。
 帽子を目深に被って顔の見えない女性らしき人物に二の腕をとられ、ホテル街に佇む静雄だ。
 今度はまがりなりにも‘付き合って’いた。だから、咎める権利はあった。
 だが不思議な程に怒りは沸き起こらず、代わりに胸を満たしたのは形容し難い悲しみだった。それと共に、人間を愛している臨也が。あの化物をこんなにも愛おしく想っていたことを確信してしまい、二重に打ちのめされた。
 映像の時刻はほんの数時間前である。しかも今宵は、静雄が訪ねてくる予定になっていた。
 と、いうことは。
 女と行為に及んだその足で、静雄は臨也に抱かれに来るのか…そう思うと堪らなくなった。


2018.4.21.永


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