HEAD
3(R18)
「気持ち良かっただろう」
 その証拠に、髪に指を絡ませ悪びれないことを言っても怒りは向けられない。徐にいざやを鷲掴まれる。
「──足りねえ」
 低く唸る声がいざやにぶつけられる。乱暴に、しかし加減はしているのだろう、へし折ってしまわない程度の力で上下にぐいぐい擦られる。
「ちょ、シズちゃ──」
 痛い。しずおを慰めていたときとは比べものにならぬ荒さにたまらず声を上げ、静雄の唇に唇を重ねる。舌をねじ込むと温かな息が頬を嬲り、手の力が緩んだ。素直に身を震わせる静雄の背に空いた手を回し、ゆるゆるとさする。
「っ…ん──」
 腰を引き寄せ片足を跨がせる。屹立した熱の先端が触れ合い、驚いたように手が離れた。それを掴み指を絡ませる。
 角度を変えて深く口付けながら腰を揺すり、雄同士を擦り付けた。刺激のもどかしさに相反して、どちらのものともつかぬ先走りが奏でる濡れた音にぞくぞくした。
「ん…ねえ、シズちゃん…」
 そっと濡れた瞳が向けられる。茶色い瞳は欲に飲まれ、それでもどこか芯を残し臨也を捉えた。
 彼の瞳を見据えたまま、片手を彼の後ろへ這わせる。先走りに塗れた指先でまだ口を閉ざしたそこに触れると、熱い呼気が口元にぶつけられた。
「──入れたい」
 ゆっくりと一度、瞬いた静雄は、臨也の唇へ噛み付くように口付けた。歯列を割ってくる舌を舌で迎え、指を一本、中へ押し込んだ。回を重ねた接合のせいか、呆気ないほどあっさりと侵入を認められる。そのくせ、十分すぎるほどの狭さを保っていた。
「っ…は──」
 熟れた反応と初な狭隘さをもつそこと同様に、静雄も欲と怯えを眼差しに共存させていた。その先を知っているから、気も体も逸るのに、そのくせまだ怯えることができる。演技のできるほど器用な男でないと知っているからこそ、その姿がこんなにも愛おしい。
「っ…ざ、や──」
 体内を自由にさせる代わりか、いざやがまた静雄の掌に包まれた。
「っ…ん…」
 負けじと敏感な箇所を指先で探る。下唇を緩く噛み、小さく濡れた音が鼓膜を優しくくすぐった。ぎこちなく扱く動きに呑まれぬよう彼のパサつく髪に頬を寄せ、深く息を吸い込む。汗とシャンプーの入り混じった香りがした。


2016.5.1.永


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