HEAD
2(R15)
「これは、俺と君とが出会ってはじめてできたものなんだよ」
「──あ?」
弾かれたように臨也を捉えた瞳に微笑みかける。金網に顔を近付け、粗い網目に唇を寄せる。
「──シズちゃん」
こくん、と静雄の喉仏が上下した。
おずおずと寄せられた唇へ、金網を挟み軽く口付けた。
「そう思ったらさ──」
呼気の当たる距離でくすくす笑う。
金網をきしりと軋ませ指を絡めた。
「俺達の子供みたいだとは思わないか?」
静雄の体にびくりと緊張が走る。細められた静雄の瞳がゆっくりと街をなぞった。
「ずいぶん──」
ややあって零れた静雄の声は、緊張を纏いかすれていた。
「ろくでもねえ子供だな」
「生きるということは、多かれ少なかれ他人に迷惑もかける──元気でなによりじゃないか」
「──迷惑しかかけねえなら、産まれて来ねえ方がいいんじゃねえのか」
静雄の瞳が真っ直ぐ臨也を見据えた。
臨也はそっと彼の手を解放し、ビルの縁ぎりぎりまで進み出た。静雄を振り返り、両手を大きく広げる。
「おいで、シズちゃん」
静雄がかしゃん、と音たて金網を変形させる。
直後、彼はフェンスを飛び越え臨也の前に降り立った。間に何の障害物も挟まない彼を、そっと抱き締める。
肩口に顔を押し付けられ、傷んだ金色の髪が臨也の首筋をくすぐった。
「君を否定するのは俺だけでいいんだよ、シズちゃん」
静雄の顔がゆっくり持ち上がる。視線の合った瞬間、薄桃色の唇に食い付いた。軽く啄み、口角を上げ微笑みかける。
「君は、俺のなんだから──」
2014.1.30.永
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