HEAD
プロローグ(R15)
 男と女が関係を持ったなら、彼らのその関わりを証明する存在が誕生することがある。それは、羨ましいとか羨ましくないとかそういう問題ではない、単なる事実だ。
 しかし、臨也と静雄ではそんなモノ、普通に過ごしていて誕生するはずもない。子供なんて厄介なモノは臨也には必要ないけれど。でも、なにか目に見える証、二人で作ったモノは欲しいのだろうなと臨也は他人ごとのようにビルの屋上から池袋の町を見下ろす。
 道路標識がビルの壁に刺さり、ショウウィンドウが砕け、トラックが逆さまになった街。静雄と自分が喧嘩をして、平和な日本の日常では有り得ないほど荒れた街。これは、臨也と静雄の関係が産み出した確かなかたちなのだと思うと、誇らしささえ覚える。
「ねえ、シズちゃん。君も見てごらん」
 鉄扉をその拳で打ち砕き屋上へ乱入してきた静雄に、フェンスの外側から声をかける。
「──あ?」
 虚をつかれたか、額の青筋をすうと引き、静雄はきょとんと瞬いた。
「綺麗だろう?」
「──何がだ」
 ゆっくりと近寄ってきた彼に手を差し伸べ、フェンスの金網を挟んで手に手を重ねる。
 きつい瞳が臨也を見、その向こうの荒れた街を眺め、痛ましげに沈んだ。


2014.1.28.永


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