HEAD
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 なんとか気を取り直して臨也は二人の‘子供’達にホットミルクを淹れてやりソファへ促す。素直に従い、揃って猫舌らしくはふはふいっている二人は可愛らしくないこともないが、それよりなにより、覚悟もなにもないところへいきなり‘生まれて’きて、静雄との時間を奪うなどどういう了見だと言いたい。予定が狂わされるにも限度があると思うのだ。
「──さっきの手品もどきはいいとしよう。君達が俺とシズちゃんの子供だと自称している件に関しても一旦おいておく。俺に何を望んでいるんだ?」
 手品じゃねえとか自称じゃないもんとかいう反発を黙殺し、一息で畳み掛けるように捲し立てる。
 臨也の眉間にくっきり刻まれた皺を見て取りなにかしらを察したか、サイケが唇を尖らせソファの背に体をどさりともたせかけた。
 ‘弟’らしいデリックは静雄の隣に傲岸不遜にふんぞり返りながらも静雄のバーテン服の裾をしっかと握っていて、微笑ましいのか腹立たしいのかわからない。
「いいじゃねえか臨也。手前、子供が欲しかったんだろ」
 しかも感覚で生きている静雄はあっさりと丸め込まれていてどうにもならない。
「あのね、シズちゃん。コウノトリとかキャベツの芯とか、みんな迷信だからね。人間は女の子宮で卵から孵るの、パソコンは妊娠しないんだよ」
 幼児に噛んで含めるような調子で伝えても、静雄は理解しているのか否かすらわからない。この男は高校までの保健の授業で、何をその脳みそに叩き込んだのだろうか。
「──よくわからねえが」
 そして、ああ。デリックそっくりの不遜な態度でふんぞり返った彼は、臨也の労力が無駄だったことをあっさりと証明した。
「俺は、こいつらが俺達の子供だってのは事実だと思う」
「いや、だからね──」
「いいじゃねえか、手前が育てろよ。金は余ってんだろ」
 何様だ、と言いたい。育てるもなにも臨也と同じくらいに既に大きい…というか、自分の子供だと認めているなら静雄が育てれば良いではないか。
 言いたいことがありすぎて言葉にならない臨也を見て静雄は、珍しく臨也をいいくるめることに成功したと判断したらしい、満足げに深々と頷いた。


2014.2.4.永


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