OTHERS
5(R18)
 薄闇に、白い包帯がぼんやり浮かび上がる。
 行灯が消されてしまうと、ただでさえ全てを晒したがらない彼の素肌は、闇に慣れた瞳でも捉えきれはしない。ただ、その温度は確かで、朧気な輪郭を明確にしたくて唇を重ねる。しかしそれも薄く不粋な布に阻まれるのだ。
「っ…は──」
 気配を殺すに慣れた昆奈門は息遣いも控え目で、それを聞き取りたくて体をまさぐり身を寄せる。深くまで探るほど、彼の体は心配になるくらいに熱を持ち、それが一層高揚を煽る。
 彼の肌に滲まぬ汗が土井の制服に染み込んだ。
 僅かばかり晒された肌は滑らかとは程遠く、凹凸を持った内腿を掌でなぞり、体内の指を増やす。引きつれた表層とは裏腹に昆奈門の内部はあつくやわらかく、呼吸に応じ強く弱く絡みついてくる。
「…っ──」
 弱い箇所に浅く爪を立てると、声を立てぬ代わりに大きく開かせた腿が痙攣するように震えた。
「雑渡さん」
 続けようとした言葉は、廊下をぱたぱた近付いてくる足音に阻まれた。濡れた瞳が土井のそれを捉え、熱い呼気が彼の頑なに外さぬ口布を震わせた。
 刹那の躊躇いは本来忍にとって命取りだ。
 足音が部屋の前で止まる。
「あれー? 先生、いないのかなあ」
「ねえ、ぼくお腹すいちゃった」
「もーしんべヱ、さっき夕ご飯食べたばっかりでしょ」
 行灯を消していたことが幸いしたらしい、無邪気な声が笑いながら遠ざかる。どちらからともなく安堵の息を漏らした。直後、熱を保った右瞳に睨まれる。
「──私だけ、言い訳のできない有り様じゃないか」
「…まあいいじゃないですか」
 殊更に宥めるように囁いて、包帯が塞いでいない目許に口付ける。体内に埋め込んだ指で内壁を軽く一撫でしてから、そっと手を引く。
 小さな呻きを耳に、袴の紐を緩めた。下帯を内側から押し上げるどいを彼の腿に緩く擦り付けると、瞳が惑うように逸らされた。
「──ちっとも、良くないよ」
 顎に触れて顔を向けさせ、下帯から取り出したものを直接、綻んだそこへ触れさせる。
 小さく緊張を過ぎらせた昆奈門の呼気が口布にぶつかり、いつしかしっとり濡れたそこへ緩く頬を擦り付ける。
「──いいですか」
「──わかっているくせに」
 小さく顎を引いたのを確認して、じりじりと食い込んだ。
「っ…」
 閉ざされた右瞼に口付ける。息を飲むほどあつい体は、身じろぐように震えた。ぎゅっと握られた彼の掌に視線を流し、最奥まで繋がった。
 腰の脇に下ろされた昆奈門の手を包むように掴む。きついくらいの収斂が微かに和らぐ。
 どんなに表層を取り繕ったところで、内面は想いを隠せぬ純真さを残している。重ねることを許さない唇の代わりに、忍び装束をほんの少しだけ乱して左側の首の付け根にキツく歯を立てた。


2017.7.25.永


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