LOSE
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「──君の部屋へ?」
 すっかり日が昇って起き出した臨也を自室デートへ誘うと、案の定少し嫌そうな表情をされた。体を許していて、しかも関係性は言うなれば恋人であるはずなのに、しかし予想できた反応に小さく苦笑う。だが、すぐに諦めるつもりはなかった。
「何もねえが、買い物して行けばいいべ? たまにはゆっくりするのもいいだろう?」
「…えー…でも、君の部屋って汚そうなんだけど」
 口ではまだ拒んでいるが、少し興味がでてきはじめたらしい、瞳がきらきら輝きだした。情報屋というのがプライベートな情報をどこまで掴んでいる職業なのかはわからないが、トムの私室に全く関心がないという訳でもないらしい。知っているのかどうかはわからないが、入ってみたい気持ちはゼロではない。もちろん、ただの借金取りであるトムの部屋に入ったところで臨也の仕事に役立つことも特にないだろう。つまり、単に恋人としての関心だと思うとやはり嬉しい。
「すぐ掃除するならいいか?」
「ああ──もういいよ、行くよ。でも俺を呼ぶだけの綺麗さがないと怒るからね」
 如何にも渋々といったように吐き捨て折れた彼は、逃げ込むようにバスルームへ篭ってしまった。しかし残念ながら透けて見えるドアは臨也の頬が血の色に染まっているのを隠してはいない。きっと男の一人暮らしを体現したような部屋は彼の怒る理由を与えることにはなるのだろうけれど、無性に擽ったくて嬉しかった。



2021.6.20.永


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あきゅろす。
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