LOSE
3(R18)
 なのに、臨也にかかれば、まるでそこが本来そういう場所であるかのようにするりと深々くわえ込まれてしまう。臨也に関心を持ちたくなどないのに、彼のそこがどうなっているか知りたくてたまらない。
 彼が本当は女であるのなら、もしかしたら彼の所業も許せてしまうかもしれない。
 そう思い至ると正臣は極力彼に気付かれないようにうっすらと目を開ける、しかしそれは敏い臨也にはすぐに見つかってしまう。
「なに…今更、君を楽しませて上げたりはしないよ──子供はもう寝る時間だ」
 変に温かい掌に目許を塞がれる。甘く諭すような声音が気にいらない。
 正臣を子供でいさせてくれなかったのは、他ならない臨也だ。その臨也が正臣を子供扱いするのか。
 苛立ちのままに彼の手首を掴み、引き剥がす。手は抵抗なく外れ、窓から射し込む街灯のうっすらとした明かりに照らされた臨也を浮かび上がらせた。
 唇に薄い笑みを掃いた臨也は、ぞくりとするほど美しかった。肝腎の股間は、コートに隠れて窺えない。だがそれだけに一層関心を煽られ、彼の体を上から下まで視線で舐め回す。上半身の衣類はほとんど乱れていない。下肢を覆っていた下着とジーンズはくしゃりと丸まってベッドの脇に落ちていた。はっきりと晒されているのは生っ白い足だけで、それなのに喉が鳴る。
 おそるおそる伸ばした手を取られ、頭上に固定された。抗おうとした反発は難なく押さえ込まれ、彼が腰を動かすと甘い痺れに力が抜けていく。喘ぐ声が零れてしまいそうで、奥歯を噛み締める。それに気を良くしたのか、臨也が目許に艶を掃いて正臣を流し見、まさおみをその体内で締め上げる。自分の手でするのとは比べ物にならぬ快感に、腰の奥から熱い奔流が込み上げて、耐える間もなく彼の最奥へ放ってしまった。
 しかし、一度出したくらいでは萎えぬまさおみを、臨也はすぐに解放してくれなどしなかった。きゅ、きゅっと扱くように締め付けられると、眼前に火花が飛ぶ。
 正臣が、バカげた考えだとわかっているが、臨也が実は女なのではないかという疑いが過ぎったのを知っているのかいないのか、臨也のコートの裾は見えそうで見えない絶妙な位置に留まって彼の股間を見せてはくれない。臨也は正臣の視線に気付いているだろうに揶揄するような笑みを返すばかりで煽り立てるように腰を動かし、稍あってきゅうっと内部が狭くなった。
「っ…あ──」
 一拍置いて、どろりと青臭い匂いが広がる。正臣は、二回目は達していない。忌々しいコートはこんなときでも臨也の体のラインを見せはしなかったが、それでも正臣が達したときと同じような匂いがしたことに少しだけほっとした。
 臨也はやはり、男なのだ──いや、女も達したらあんな匂いがするのだろうか。どんな保健の教科書にも、男女が絶頂に達したときの匂いなんて生々しいものは載っていなかった。
 混乱する正臣を後目にあっさりと体を離した臨也は、覗く隙もあらばこそ素早く衣服を身に付けて、さっさと窓から出て行ってしまう。
 全部全部、ただの悪夢だったらどんなにいいだろう。でもべたついた下半身は、紛れもなく現実だった。


2020.6.19.永


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