LOSE

 面白い出来事は何かないかと、双眼鏡を巡らせる。その視野に、たまたま…そう、たまたま。田中トムが映り込んだ。と、いうことはおそらく平和島静雄も近くにいるはずで、彼の驚異的嗅覚を鑑みるに、ぼーっとしている場合ではない。彼の面倒臭さはここ十年で知り尽くしているのに、動けない。
 だって、臨也は昨日、彼と──
 小中学生でもあるまいし、翌日まであれくらいのことを引きずるなど有り得ない。有り得ない、けれど──
 臨也は大きく息を吐き、すっ飛んでくる静雄に背を向けてビルの屋上から飛び降りた。
 頬を撫でる冷たい冬の風が心地良い。なんならコートも脱ぎ捨ててしまいたい程に熱かった。


2018.5.4.永


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