LOSE
たまには
 常に役割が決まっているのは不公平だと思う。それは、夜の営みとか、仕事といった大袈裟な話ではない。いざ、プライベートで会う折には、正臣はいつも30分前には指定された場所に行かなければならず、しかもそれが達成されていないと文句を言われる。そのくせ、いつもギリギリまで仕事をしている臨也は大抵重役出勤で、勿論正臣以外にはそんな真似しないのだから信頼の証と取れなくもないが、面白くはない。臨也は情報として正臣の一挙手一投足を掴んでいるようだが、ただただ待つ正臣は楽しくない。
 だから、たまには待ち合わせ場所に先に来ている臨也を見たいと言っても構わないだろう。
 だが、その要求を告げられた臨也の反応は、当然のごとくはかばかしくはなかった。
「俺は君と違って忙しいんだ。なのにわざわざ君を待ちぼうける無駄な時間を過ごせというの?」
 ここで、俺にはいつも無駄な時間を過ごさせているくせに、などと正論を吐いたところで煙に巻かれ、本来の要望への同意は得られず有耶無耶になるのは目に見えている。だから正臣は小さく息を吐き、用意していた譲歩案を提示した。
「じゃあ、事務所で待ち合わせましょう。そしたらあんたも仕事ができる。だいたい敢えて外で待ち合わせるメリットなんてどこにもないじゃないすか」
 口を挟まれないよう一気に言い切り、臨也を睨みつける。それを黙って聞いていた臨也は、ややあって片眉を持ち上げ、殊更に大きな溜息をついた。
「いや、外にしよう…ただし次回は時間厳守だ。間違っても30分前に来たりするなよ」


2018.5.4.永


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