LOSE
2
 週末の道は混んでいて、道路情報を入手していてもなかなか進まない。朝食を食べたきりパンをかじることすらできなかった1日のせいで、知らず腹が鳴った。
「なんだ、お前が腹を減らしてたのか」
 聞き逃さず優しい口調で指摘され、眉が寄った。
「ずっと四木さんと一緒でさ」
「へえ?」
 突っ込んで聞いてこないのがいつもは心地良いのに、今は何故か拗ねた気分になる。
「また忙しくなんのか」
「──街は騒動が好きなのさ」
「迷惑だな」
 車はどんどん住宅街に入り込み、擦れ違う者も少なくなっていく。灯りの落ちた家々の狭間にぽつんと、門扉を開いた建物があった。
「まだやってるような店? 店なのか、ありゃあ」
「予約しておいたんだ」
 殊更に素っ気なく吐き捨て、一見すれば民家にも見える日本家屋に乗り入れる。玉砂利の音が耳に優しい。従業員が門を閉めるのがバックミラーに映った。


2016.5.11.永


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