LOSE
退廃のウロボロス(R18)
 性交の姿をウロボロスに喩えた女がいる。それも男同士の性交渉をだ。誰かといえばなんのことはない、今まさに臨也と性交渉している男の連れなのだけれど。
 しかし、こんな姿が完全なはずはない、と臨也は熱い吐息をひっきりなしに紡ぐ唇を重ね体内を彼の楔に抉られながら思う。
「っ…いざや──?」
 他者の感情に敏感な男は熱に浮かされながらも臨也の心の漣を感じ取り、瞳を覗き込んできた。そんな門田に口角を上げてみせ、その唇に思うさま噛み付く。
 ひくり、と刹那彼の動きが止まり、直後乱暴に最奥まで突き入れられた。
「あ、っ──」
 意味のない音が喉から零れ落ち、彼の唇に吸い込まれた。
 汗ばんだ門田の背に両手を回す。熱い液体に指先が滑った。大きな手に湿った髪を掻き乱された。
 細めた目許に口付けが落ちて来る。涙がちゅ、と吸い取られた。
「──俺は、変わらねえよ」
「なに、言ってるの、っ…!」
 いざやが自身の腹筋に擦られる。ひくりと背がしなった。
「俺は…俺も、お前がどんな奴か知ってるからな」
 かち合った瞳は真っ直ぐ穏やかだった。
 臨也の髪を愛おしげに撫で、門田はすうっと目を眇める。
「へ、え…どんな奴だって?」
 ぴくん、と片眉を持ち上げ臨也は乱れる呼気を抑えつけて口角を吊り上げる。
 わかったような口調が気にいらない。門田は目許だけで笑み、いざやをすうっと扱き上げた。
「俺は…嫌いじゃねえぜ」
「っ、は…あ──」
 ふざけるな、わかったような口を利いて──俺は…
 言いたいことは何ひとつ言葉にならないままに喉が震える。
 こんなことが嬉しいなんてどうかしている。こんなものが嬉しいのは、相手が彼だからだなんてどうしようもない事実に胸の奥が震え唇を噛んだ。
 柔らかな粘膜を自ら突き刺す牙を太い指がやんわりなぞった。後を追うように唇を重ねられる。
 熱く優しい温度に比喩でなく涙が零れた。
「──っ、ん…」
 ゆるゆる首を振り逃れようとする動きを、顎を掴まれ押さえつけられた。
 組み敷かれ、体内にかれを受け入れて…これ以上なく屈辱的な行為のオンパレードがこんなに心地良いのは、彼が彼であるからなのだ。
 ウロボロスなわけはない。
 永遠の命もなければ、次世代に繋ぐ生もない。それでも──
 俺達は刹那の情を交わすんだ。


2014.4.29.永


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