GORILLA
14(R15)
「──ザキが可愛いって言っていいのは、俺だけなんだからな」
 どういう風の吹き回しで、あんなに積極的になってくれたのか。残っている仕事などそっちのけで自分より図体のデカい彼を布団に引き入れ、腕枕をする代わりにされながら胸元に頬を寄せ寝物語に問い掛けると、たっぷりと間をおいてから近藤はぽつんと呟いた。行為の名残の眠気に心地良く包まれ、夢の世界へ足を踏み入れかけるほどの長い沈黙であった。そのせいで、山崎には近藤の言葉の意味がしばらく理解できなかった。
 靄がかる思考を叱咤して頭を回転させ、幾度も脳内で反芻する。
 そうして、たっぷり15分は経てから山崎は素っ頓狂な声と共に跳ね起きた。
「きょくちょ、それって…」
 だがそのときには遅かった。くうくうと子供みたいな声を漏らし睡魔に攫われた愛しい人を山崎は暫し呆然と見つめ、肩を竦めた。
「──ま、いいか」
 小さく息を吐く。
 彼の温かく厚い胸にぎゅっと抱き付いて瞳を閉じた。


2015.2.6.永


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