SOUL
3(R18)
 自身を引き抜いてからの桂は、実に甲斐甲斐しかった。井戸で手拭いを濡らしてきて血を拭き取り、着物を整え──しかし、着物の腰の辺りに言い訳のしようもない血痕と白濁の染みがついたことばかりは如何ともし難い。それがあるからこそ、桂の奉仕も露ほどの価値すら感じられない。
 曲がりなりにも体裁を整えて桂は、未だ飼葉に腰掛けた高杉の眼前に片膝を付き、やや低い位置から瞳を見据える。
「高杉」
「──なんだ」
 文句を言うのすらも億劫だ。後で叩きのめしてやるといきがるのすら、疲労のせいか力ない。
 そんな高杉の両手を彼のそれで包み桂は、至極真剣にのたまった。
「俺は、貴様を慕うているらしい」
「あァ?」
「俺と添い遂げてはくれぬだろうか」
 ──怒りたい。そう頭で思うのに、高杉は小さく顎をひいていた。
 本当は、きっと…体中が痛いとか、抗うのが面倒だとか、肉体的にキていたとか。言い訳ばかりは掃いて捨てるほどにあったけれども、実際のところは悔しいことにわかっていた。
 ──嬉しかったのだと。
 感極まったように瞳を潤ませた桂に抱き付かれ、また黴臭い飼い葉に埋もれても、それに不快を覚える余地すらないほどに、嬉しいのだと。そんなこと。気付いてしまったならもう、誤魔化せない。


2014.8.10.永


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