SOUL
9(R18)
 久しぶりに体を重ねて、高杉は少しも変わっていなかった。肌に刻まれた傷は増え、一度は落ちた筋肉が戻り、大人の戦う男の体に成長しても、彼は何も変わっていない、あの日桂が暴いたままだった。こんなに肌を出し、かぶいたナリで煙管など吹かしてはいても、この男の柔らかいところまで触れさせたことはなかったのだろう。今のところ、高杉がここまでを許すのは桂にだけだ。桂には高杉を縛り付けるつもりは今はもうなかったけれど、それでも唯一許されているという実感は悪くなかった。もっともっと、どこまでだって優しく、大切にしたくなる。
「っ…ん──早く…」
 だが、丁寧に内を解すうち、高杉の方が先に音を上げた。
 しどけなく足を開き、服を乱して全てを桂の前にさらけ出したまま、とろりと濡れた右目が桂を絡めとった。思わずごくりと喉が鳴る。痛いほどに張り詰めたかつらが褌を内側から押し上げて、息が苦しい。
 大切に、優しく、なんて綺麗事ががらがらと崩れていく。
 高杉もまた、綺麗事なんかではない欲に駆られた一人の男の目をして、桂の着物を掴み左右にぐいと割開いた。少々暴れても乱れぬほどに着付けた単衣がその内側を容赦なく晒し、下帯の内側に存在する屹立の気配まで露にされる。高杉はちらりとそこへ視線を流し、大きく下肢を開いたまま唇の端を吊り上げた。
「てめェだって、早く入れてェだろォ、ヅラぁ」
「っ…ヅラじゃない、桂だ」
 早く入れたい。そんなのは、当たり前だ。桂だって健康な男なのだ。大義を負っているから、色事を最重要視などしてはいないが、男であるからには性欲に我を忘れることもあれば、機会があったら穴に入れたいのだ。高杉の内を充分に解したとは思っていなくとも、足を開いて誘われれば、否やと言える理性はあまりにか弱い。
「──知らぬぞ」
 低い声で先に言い訳をし、膝の裏を抱え上げた。晒された雄を後腔に宛てがい、瞳を合わせたままじりじりと押し込む。あの時と同様に硬い入口を通過してしまうと、その奥は柔らかく、温かく、かつらをずっと待っていたかのようだった。
「っ…は──あ…ヅラぁ…」
「ヅラでは、ない…と言うのに」
 甘く蕩けた声で呼ばれると、未だ認めてはいない渾名ですらとても心地よく聞こえて首を振る。
 呑まれてしまいそうだった。抗う心と裏腹に深くまで食い込んだかつらの下生えと高杉の入口がじりじりと擦れ合う。互いに揶揄する余裕もないままに息を弾ませ、視線を絡ませた。
 あの日と違って執拗な熱に浮かされていないはずの高杉の右瞳はしっとりと潤み、何か勘違いしてしまいそうだ。
「──高杉…入った、ぞ」
「っ…は──」
 こくこくと頷き鉢に入れられた魚のように不器用に空気を貪る様は、彼がまるで慣れていないことばかり如実に伝えてくるから堪らない。肌を晒し、かぶいたなりで裏の世界に生きているくせに、桂だけに操を立てていると信じてしまえるのが嬉しい。憎からず想っていることを察してはいても、決して形にすることができない関係だからこそ、一途な情を実感できるのは一入だった。
 確かめるように重ねた唇は熱く、柔らかく、生きた温度を纏っていた。


2021.7.25.永


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