SOUL
15(R15)
 高杉は言い出したら聞かないから仕方ない、と己に言い訳してはみるものの、やはり連れ立って歩けるのが嬉しい。色んなことがあった後だから余計に。
 高杉は気力で動いているらしく、その歩みは遅い。ふらつく腰を支えてやりたいけれど、妙に意地を張った高杉は触れると怒るので我慢している。
 軽く湯を浴び包帯を巻き直して、彼の潮で濡れた衣の代わりに桂の普段着の青い着物を纏った高杉は、手を貸すのを河上にしか許していなくとも可愛い。これが彼シャツというものなのだろうか。以前来た秋葉系の客が語っていたモノの良さも少しは理解できた気がした。
 高杉が桂の側にいる幸福を噛み締め出勤する。
 高杉の動作がいつもより遅いこともあり遅刻ギリギリではあったが、身支度が整っていることと、客を同伴したように見えたことで表立った批判はなかった。代わりに一歩店に入ったところで、客がおらず暇そうにしていたオカマ達が河上と高杉に目を輝かせて寄ってくる。いい男だの可愛いだの言ってもみくちゃにしようとしてくるものだから、高杉の二の腕を掴んで無理やり抱き寄せた。
「ヅラ子、同伴なんてやるじゃない。しかもこんないい男どこで捕まえてきたのォ?」
 どう聞いても野太い声で、化粧の下に髭の剃り跡がくっきり青々浮き出た連中を掻き分け、高杉を座敷に座らせる。


2019.8.9.永


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あきゅろす。
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