SOUL
6(R15)
 高杉の計画は、具体的にはわからない。
 あの悪名高い春雨と拘わっているらしいと聞いたのは、彼と会う約束のある日の前夜だった。彼に国家権力に抗ってでも成し遂げたいことがあるのは知っている。彼にとっての最優先事項はそれであり、そのために近藤よりずっとよくできる類の頭を回転させているのだと。
 幕府に連なる末端警察組織の長である近藤は、犯罪シンジケートたる春雨がどんなことをしてきたのか、全てではないにしろ知っていた。奴らが地球にどんなものを持ち込んだのか、その結果心の弱い市井の民がどうなったかも知っていた。高杉が殊更に民衆を傷つけないことは信じていたが、彼の目的のために必要ならば犠牲が如何に多くとも意に介さないだろうことも同じくらい確信していた。春雨が彼にとって必要であるなら、ただの情人に過ぎぬ近藤が何を言っても無駄だろう。もしどうしても高杉を止めたいのなら、彼以上に穏便でない手段を用いる他なかった。
 立場と私情の狭間で決断しかねたままに、当日約束を交わした出逢い茶屋で彼を待つ。
 高杉の、ピリピリとした気配が近藤を目にして撓むのを見てしまうと、愛しさで言葉も出なくなった。そして、彼の仕事についてなんて野暮なことは言えなくなってしまった。尤も、それを尋ねたところで近藤には何をもできはしないのは明白だ。それはあくまで公人としての近藤が考えるべきことで、あの夜高杉と真名を交わした自分達はあくまで私人でしかない。
 ──どちらかが尻尾を掴まれたなら、そんな言い訳は通じないことくらいは痛いほどわかっていても。
 後ろ手に襖を閉めて近藤の前まで来た高杉は、手を差し出すと素直に掴んだ。手を引かれるままに胡座の上に横座りし、一息つく暇もなく近藤の頬に触れ荒々しく口付けた。以前より性急なそれに、彼が今までより更にピリピリした日常を送っているだろうことがありありとわかり、そうすると余計に何も言えずに舌を彼の唇に合わせ接吻を深いものにした。


2019.8.31.永


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